判旨
憲法38条2項後段が禁じる「不当に長い抑留若しくは拘禁後の自白」とは、身柄拘束と自白との間に因果関係が認められる場合を指す。したがって、身柄拘束と自白との間に因果関係がないことが明らかな場合には、当該自白を証拠とすることは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
憲法38条2項後段にいう「不当に長い抑留若しくは拘禁後の自白」として証拠能力が否定されるための要件。特に、拘禁と自白との間の因果関係の要否が問題となる。
規範
憲法38条2項後段の「不当に長い抑留又は拘禁」後の自白が証拠能力を否定されるのは、その拘束と自白との間に因果関係が存在する場合に限られる。拘束期間が長期であっても、自白がその拘束に起因するものでないことが明らかな場合には、証拠排除の対象とならない。
重要事実
被告人Aは勾留後10日で保釈されたが、保釈から約5か月後の予審判事による第2回訊問で自白した。一方、被告人B及びCは勾留執行当日の第1回訊問において、既に犯罪事実を全面的に認めていた。弁護人は、その後の第2回訊問調書に記載された各被告人の自白は「不当に長い拘禁」後の自白であり違憲であると主張した。
あてはめ
被告人Aについては、保釈中の自白であり、物理的な身柄拘束が解かれた後になされたものであるから、勾留と自白の間に因果関係はない。また、被告人B・Cについても、身柄拘束の開始直後(当日)に既に全面的な自白を行っていることから、その後の第2回訊問での自白が、不当に長い拘束によって得られたものとはいえず、因果関係は認められない。
結論
被告人らの自白と勾留との間には因果関係がないことが明らかであるため、当該自白を証拠とすることは憲法38条2項後段に違反しない。
実務上の射程
自白の証拠能力(自白排除法則)の文脈で、憲法38条2項・刑訴法319条1項後段の解釈に用いる。不当に長い拘禁がある場合でも、即座に証拠能力が否定されるのではなく、その拘束が自白を誘発したという因果関係が必要であることを示すメルクマールとして重要である。
事件番号: 昭和23(れ)497 / 裁判年月日: 昭和23年9月18日 / 結論: 棄却
一 かりに原判決が證據とした原審公判における被告人の自白前の拘禁が不當に長いものであるとしても、被告人は本件犯行については、拘禁後四〇餘日を經た豫審の取調べにおいて、すでに自白をしているのであり、更にその後七〇餘日を經た第一審公判においても同樣自白をしているのであつて、この程度の期間の拘禁は、前述の事情等からみて不當に…
事件番号: 昭和24(れ)401 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
一 しかし被告人は同年七月七日檢事に對して本件犯行を自白し次いで同月二九日第一審公判廷においても自白しているのであつて、原審公判廷の自白も従前の自白を繰返したものに過ぎないのであるから右自白と拘禁との間には因果関係のないことが明かである。然らば原審が右自白を證據としたからといつて憲法第三八條第二項刑訴應急措置法第二〇條…