一 拘禁と自白との間に因果關係のないことが明らかな場合の自白は、憲法第三八條第二項並びに刑訴應急措置法第一〇條第二項にいわゆる不當に長く拘禁された後の自白に當らないことは、當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三〇號同二三年二月六日大法廷判決、同二二年(れ)第二七一號同二三年六月二三日大法廷判決) 二 共同被告人の供述も被告人の自白を補強する證據となり得ることもまた當裁判所の判例とするところである。 三 證據調の限度をいかに定めるかは、事實審たる原審の自由裁量に任されているのであるから、原審が所論の證人訊問の請求を却下したからといつて、憲法第三七條第二項に違反するものではない。このこともまた当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二三〇號同年七月二九日大法廷判決、同年(れ)第八八號同年六月二三日大法廷判決) 四 裁判官が法律において許された範圍内で刑を量定して被告人に實刑を科した場合に、それが被告人の側から見て過重であるとしても、憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」を科したものではないことは、當裁判所の判例とするところである。
一 拘禁と因果關係なき自白と憲法第三八條第二項刑訴應急措置法第一〇條第二項 二 共同被告人の供述と補強證據 三 證人訊門請求の却下と憲法第三七條第二項 四 實刑の言渡と憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」
憲法38條2項,憲法38條3項,憲法37條2項,憲法36條,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應急措置法10條3項,舊刑訴法338條1項,舊刑訴法344條1項
判旨
不当に長く拘禁された後の自白であっても、拘禁と自白との間に因果関係がないことが明らかな場合には、憲法38条2項等による証拠能力の否定はなされない。
問題の所在(論点)
憲法38条2項及び当時の刑事訴訟応急措置法10条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」として証拠能力が否定されるための要件、特に長期拘禁と自白との因果関係の要否が問題となる。
規範
憲法38条2項及び刑事訴訟法上の「不当に長く拘禁された後の自白」として証拠能力が否定されるためには、当該拘禁と自白との間に因果関係があることを要する。したがって、拘禁と自白との間に因果関係がないことが明らかな場合には、右自白は同条項に当たらず、証拠能力を有する。
重要事実
被告人両名は、逮捕から保釈されるまで7ヶ月余りにわたって拘禁されていた。しかし、被告人らは逮捕から2日後の司法警察官による取調べにおいて犯罪事実をすべて自白し、その後の勾留訊問、検察官の取調べ、第一審及び第二審の公判廷に至るまで、終始一貫して自白を継続していた。
あてはめ
被告人らは7ヶ月余という長期間拘禁されているものの、その自白は拘禁開始直後の極めて早い段階(逮捕後2日目)からなされており、その後も一貫している。この事実関係に照らせば、原審(第二審)公判廷での自白は長期の拘禁によってもたらされたものとはいえず、拘禁と自白との間に因果関係がないことが明らかである。したがって、「不当に長く拘禁された後の自白」には該当しないと評価される。
結論
拘禁と自白との間に因果関係がないことが明らかな以上、本件自白の証拠能力は否定されず、これに基づき有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
自白の任意性法則(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に関する判例である。答案上は、不当な長期拘禁がある場合でも、自白が拘禁の初期段階からなされている等、拘禁と自白の因果関係が切り離せる場合には、任意性の疑いがない(または不当拘禁後の自白に当たらない)と判断する際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1339 / 裁判年月日: 昭和24年10月25日 / 結論: 棄却
一 記録に徴するに、原判決において證據に舉示した原審公判における被告人A同B同Cの供述は、何れも保釋により身柄を釋放されてより約一年一〇ケ月後の公判期日に出廷し自由且つ任意に供述したものである、そして被告人等自白の經過を見るに、被告人Aは昭和二一年九月三日豫審第三回訊問において犯行を自白してより其後同年一一月二一日の豫…