覚せい剤取締法にいわゆる覚せい剤の製造のうちには、化学的変化を伴わないで調合又は混合してこれを製剤する場合も含む。
覚せい剤取締法にいう「覚せい剤の製造」に含まれるべき場合
覚せい剤取締法15条,覚せい剤取締法41条1項3号
判旨
覚せい剤取締法における「製造」には、化学的変化を伴わない場合であっても、成分を調合または混合して製剤する行為が含まれる。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法における「製造」の定義に、化学的変化を伴わない調合または混合による製剤行為が含まれるか。また、実刑判決による家族の生活困窮が憲法25条に違反するか。
規範
覚せい剤取締法にいう「製造」とは、化学的変化を伴う化学的合成のみを指すのではなく、成分を調合または混合することによって、特定の効能を有する製剤として仕上げる行為も含むと解すべきである。
重要事実
被告人が、化学的変化を伴わない手法により、成分を調合または混合して覚せい剤を製剤した行為について、同法上の「製造」に該当するか否かが争われた。また、弁護人は実刑判決により家族が生活困難に陥ることが憲法25条に違反すると主張した。
あてはめ
覚せい剤取締法の目的は覚せい剤の濫用防止にあり、化学的変化を伴わずとも調合・混合によって覚せい剤を製剤する行為は、流通可能な状態の薬物を生み出す点において「製造」としての実質を有する。したがって、本件のような製剤行為も「製造」に当たると評価される。また、刑罰による家族の不利益は判決の違憲性を基礎付けるものではない。
結論
被告人の行為は覚せい剤の「製造」に該当し、有罪判決は維持される。また、実刑による家族の困窮を理由とする違憲主張は採用されない。
実務上の射程
覚せい剤取締法等の薬物犯罪における「製造」概念の広さを画定する判例である。必ずしも高度な化学合成を必要とせず、既存の物質を混ぜ合わせて製品化する段階でも「製造」が成立することを示す際に引用すべきである。
事件番号: 昭和29(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和32年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤の製造事実の認定において、鑑定書により製造工程の科学的可能性が認められ、かつ被告人らの知識経験や製造過程での身体反応等の諸証拠を総合すれば、当該物件が法所定の覚せい剤であると認めることができる。 第1 事案の概要:被告人D(化学薬品の知識・技術あり)と被告人E(化学専門学校卒、研究所勤務経…
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…