判旨
覚せい剤取締法違反の事件において、鑑定書等の証拠に基づき当該物質が法指定の成分を含有していることが認定されているのであれば、事実誤認や訴訟法違反の不当はない。
問題の所在(論点)
覚せい剤の所持・使用等の罪において、対象物質が法の規制対象であることの認定が、証拠(鑑定書)に基づき適切に行われているか。また、その認定プロセスに訴訟法違反等の瑕疵があるか。
規範
有罪判決において罪となるべき事実を認定するには、証拠(鑑定書等)に基づき、当該物質が法令(覚せい剤取締法等)の規制対象となる具体的成分を含有していることを合理的な疑いを超えて立証する必要がある。
重要事実
被告人が覚せい剤取締法違反で起訴された事案。第一審判決は、所論の覚せい剤について国家地方警察技官の鑑定書を証拠として挙示し、当該物質が「フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩」を含有するものであることを認定した。被告人側は、判例違反、事実誤認および量刑不当を理由に上告した。
あてはめ
第一審判決は、証拠として挙げられた国家地方警察技官の鑑定書の内容を精査しており、それによれば当該物質がフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有していることが具体的に認定されている。原判決(二審)がこの第一審の判断を是認した説示は首肯し得る。したがって、事実誤認や判例に違反するような訴訟法上の瑕疵は認められない。
結論
本件物質が規制対象成分を含有しているとの認定は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
薬物事犯における「物質の特定」という基本的な立証のあり方を示す。鑑定書により成分が特定されている限り、事実認定の合理性は維持される。答案上は、覚せい剤の定義(法2条)該当性を証拠に基づき認定する際、鑑定の有無や内容を重視する実務の運用を裏付けるものとして位置付けられる。
事件番号: 昭和29(あ)4204 / 裁判年月日: 昭和32年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤の製造事実の認定において、鑑定書により製造工程の科学的可能性が認められ、かつ被告人らの知識経験や製造過程での身体反応等の諸証拠を総合すれば、当該物件が法所定の覚せい剤であると認めることができる。 第1 事案の概要:被告人D(化学薬品の知識・技術あり)と被告人E(化学専門学校卒、研究所勤務経…