判旨
証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いる違法があっても、他の適法な証拠のみで判示事実を認定できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼさない。したがって、かかる違法は控訴理由(及び上告理由)とはならない。
問題の所在(論点)
証拠調べを経ていない証拠を事実認定の資料とした場合に、他の証拠によって事実を認定できるのであれば、刑事訴訟法上の控訴理由(または上告理由)となる「判決に影響を及ぼすべき」違法にあたらないか。
規範
証拠調べを経ていない証拠に基づき事実を認定したという訴訟手続の法令違反があっても、当該証拠を除外した「その余の証拠」によって判示事実を十分に認定することが可能であるならば、当該違法は「判決に影響を及ぼすべき」ものとは認められない。
重要事実
被告人が上告を提起した事案において、弁護人は第一審ないし控訴審の証拠調べ手続に違法がある旨を主張した。具体的には、判決が事実認定の基礎とした証拠の中に、適法な証拠調べを経ていないものが含まれていた。しかし、記録上、問題の証拠を除外してもなお有罪判決を維持するに足りる他の証拠が存在していた。
あてはめ
判旨は、一部の証拠について証拠調べを経ていないという違法が存在したとしても、それ以外の証拠のみで判示された犯罪事実を認定することが可能であると判断した。この場合、手続上の瑕疵は存在するものの、結論である判決の主文に影響を与えるものではない。したがって、法が定める不服申立理由としての重要性を欠くといえる。
結論
本件上告は棄却される。判決に影響を及ぼさない証拠調べの不備は、適法な上告理由とはならない。
実務上の射程
刑事訴訟法における「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」の有無を判断する際の基準を示す。事実誤認や手続違憲を主張する際、当該違法を排除しても結論が維持されるかという「可分性」の観点から答案を構成する際に有用である。
事件番号: 昭和28(あ)69 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠能力のない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定する違法があっても、当該証拠を除外した他の証拠のみで犯罪事実を認定できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:第一審判決において、証拠として提出されていない証拠を犯罪事実認定の基礎とした(罪証に供した)という違法が主張さ…