他人の被擬事件につき差押えられた証拠物件であつても、被告人において異議なく証拠調のなされてある以上これを証拠とすることは妨げない。
他人の被擬事件につき差押えられた証拠物件を証拠とすることの適否
刑訴法220条,刑訴法309条,刑訴法306条,刑訴法317条
判旨
別件で差し押さえられた証拠物件であっても、被告人に対する本件で適法に証拠調べがなされた以上、これを事実認定の資料とすることは許される。
問題の所在(論点)
別件で差し押さえられた物件を、本件の証拠として提出し、事実認定の資料とすることが刑事訴訟法上許されるか。証拠調べの手続と証拠能力の関係が問題となる。
規範
証拠物件が別件で差し押さえられたものであっても、当該被告人に対する訴訟手続において、適法な証拠調べの手続が経られている限り、裁判所がこれを事実認定の資料として用いることは妨げられない。
重要事実
被告人に対する刑事事件において、証拠物件として提出された資料が、共犯者ないし第三者であるAに対する別件で差し押さえられたものであった。第一審および原審において、当該証拠物件について異議なく証拠調べが実施されたが、被告人側は別件差押えであることを理由に、証拠能力を否定し、事実認定の資料とすることの違法を主張して上告した。
あてはめ
本件において、問題となっている証拠物件は確かにAに対する別件で差し押さえられたものである。しかし、被告人に対する本件の公判手続において、当該物件について異議なく証拠調べの実施がなされていることが認められる。このように、適法な証拠調べの手続が履践された以上、差押えが別件で行われたという一事をもって、直ちにその証拠能力が否定されるものではない。したがって、裁判所がこれを事実認定の資料として採用した判断は正当である。
結論
別件で差し押さえられた物件であっても、適法に証拠調べがなされた以上、事実認定の資料とすることができる。
実務上の射程
証拠の関連性と適法な証拠調べの重視。別件差押え物件であっても、公判での証拠調べを経ていれば証拠能力が認められ得ることを示す。ただし、本判例は領置手続等の詳細には踏み込んでおらず、違法収集証拠排除法則が確立する前の判断である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和30(あ)1514 / 裁判年月日: 昭和30年8月9日 / 結論: 棄却
原審が検事の量刑不当の控訴趣意を理由ありとして刑訴第四〇〇条但書に依り第一審判決(罰金刑)を破棄自判(懲役三月、罰金五千円)するに当り、検察官の請求により被告人の同意の下に被告人に対する別件の起訴状の謄本を取調べている場合には、原審が新しい証拠を取調べなかつたものとはいえない。
事件番号: 昭和28(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における事実認定と証拠の対応関係について、判示の順序に従い挙示された証拠を逐次検閲することで、いずれの証拠によりいずれの事実が認定されたかを明らかにできる場合には、刑事訴訟法上の理由不備の違法はない。 第1 事案の概要:第一審判決に対し、被告人側が事実と証拠との関連性が不明確であるとして、刑事…