捜査差押が、令状掲記の場所において差押の目的たる物につきなされた以上、押収品が、令状の執行を受くべき者以外の者の所有に属するというだけでは、右差押を違法ならしめるものではない。
令状の執行を受くべき者以外の所有に属する物の押収の適否
刑訴法218条,刑訴法219条
判旨
捜索差押令状の場所の記載は、合理的に解釈して当該場所を特定し得る程度であれば足り、令状執行の際に別人の犯罪が発覚した場合は、逮捕に伴う差押(刑訴法220条1項2号)としても適法となり得る。
問題の所在(論点)
他人(A)を被疑者とする捜索差押令状の執行中に、現場にいた別人の犯罪が発覚してなされた押収手続の適法性。
規範
1. 捜索差押令状における「場所」の表示は、合理的に解釈してその場所を特定しうる程度に記載されていれば、令状の特定として必要かつ十分である。 2. 他人に対する捜索差押令状の執行中に、たまたまその場にいた別人の現行犯事態が発覚した場合、当該被告人の逮捕に伴う無令状の差押(刑事訴訟法220条1項2号)として、その適法性を基礎づけることが可能である。
重要事実
捜査機関は、被疑者Aに対する覚せい剤取締法違反事件につき、令状に基づきAの氏名が記載された捜索差押場所において執行を行った。その執行の際、たまたまその場にいた被告人について覚せい剤不法所持の事実が発覚したため、捜査機関は被告人を現行犯逮捕した。被告人側は、令状に記載された氏名が被告人と異なること(Aであること)を理由に、当該捜索差押の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件の捜索差押令状は、場所の表示において合理的に特定されており、Aに対する被疑事件の目的物につきなされたものであるから、令状自体の特定に欠けるところはない。また、その執行過程で被告人の不法所持が発覚し、現行犯逮捕が行われていることから、本件の押収は刑訴法220条に基づく「逮捕に伴う押収」としての性質も併せ持っている。したがって、令状掲記の氏名と被告人が異なるからといって、直ちに手続を違法とすることはできない。
結論
本件捜索差押手続は違法とはいえず、被告人に対する有罪判決は維持される。
実務上の射程
捜索場所の特定の程度に関する規範を示すとともに、他人の令状執行下で別人の犯罪が発覚した場合の処理として、逮捕に伴う無令状捜索差押え(刑訴法220条)への切り替えという構成を認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和29(あ)3944 / 裁判年月日: 昭和31年9月11日 / 結論: 棄却
覚せい剤の所持の禁止、譲渡の制限および禁止に関する覚せい剤取締法(昭和二九年六月一二日法律第一七七号による改正前のもの)第一四条第一項、第一七条第三項、第四一条第一項第二号および第四号の各規定は、憲法第二二条に違反しない。