今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があっても、その暴行の時点は証拠物たる覚せい剤発見の後であり、被告人の発言に触発されて行われたものであって、証拠物の発見を目的とし捜索に利用するために行われたものとは認められないなど判示の事実関係の下においては、右証拠物を警察官の違法行為の結果収集された証拠として証拠能力を否定することはできない。
今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があってもそれ以前に発見されていた覚せい剤の証拠能力は否定されないとされた事例
憲法31条,憲法35条,刑訴法1条,刑訴法218条1項,刑訴法317条
判旨
捜索の過程で生じた警察官の暴行が証拠発見後になされ、証拠物の入手を目的としたものでない場合、当該証拠物の証拠能力は否定されない。また、先行する暴行が被告人の意思決定に実質的な影響を及ぼしていない場合、その後の任意提出手続等により得られた証拠の証拠能力も肯定される。
問題の所在(論点)
捜索・差押えの過程で行われた警察官による暴行等の違法行為が、当該過程で発見された証拠物(覚せい剤)およびその後に得られた証拠(尿の鑑定書)の証拠能力に影響を及ぼすか。
規範
違法収集証拠排除法則の適用に際しては、当該違法行為が証拠収集を目的としたものか、あるいは証拠収集の過程と密接な関連を有するかを検討すべきである。具体的には、違法行為の時点、目的、証拠収集との因果関係、および被告人の意思決定への影響を総合考慮して、証拠能力の存否を判断する。
重要事実
警察官が被告人宅を捜索中、覚せい剤を発見した直後、発見を否認するような発言をした被告人に対し、襟首を掴んで引き倒し、背中等を蹴る暴行を加えた。警察官はそのまま現行犯逮捕し覚せい剤を押収した。その後、被告人は警察署で尿を任意提出し、鑑定の結果、覚せい剤成分が検出された。なお、捜索時に手続なく手帳が持ち去られる不適切な処理もあった。
あてはめ
覚せい剤については、暴行の時点が証拠発見の後であり、被告人の言動に触発されたものであって、証拠発見・捜索のために行われたものではない。したがって、違法行為の結果として収集された証拠とはいえない。また、尿の鑑定書については、被告人自身が公判で「使用は事実なので提出を拒む意思はなかった」旨供述しており、先行する暴行が尿提出の意思決定に実質的な影響を及ぼしたとは認められないため、任意提出手続に違法はない。
結論
本件覚せい剤および尿の鑑定書の証拠能力はいずれも肯定される。
実務上の射程
捜査過程に一部違法があっても、証拠収集との間に「目的的関連性」や「因果関係」が認められない場合には、排除法則が適用されないことを示した事例である。答案上は、先行する違法の重大性と、当該違法と証拠収集との関連性(因果関係の遮断・希釈)を切り分けて論じる際の参照となる。
事件番号: 平成6(あ)894 / 裁判年月日: 平成7年5月30日 / 結論: 棄却
警察官が職務質問に付随して行う所持品検査として被疑者の運転していた自動車内を承諾なく調べた行為及びこれに基づき発見された覚せい剤の所持を被疑事実とする現行犯逮捕手続に違法があり、引き続いて行われた採尿手続も違法性を帯びるが、警察官は、停止の求めを無視して自動車で逃走するなどの不審な挙動を示した被疑者について、覚せい剤の…