所持品検査に違法があってもこれにより得られた証拠の証拠能力を肯定できるとした原判断を是認した事例
憲法31条,憲法35条,刑訴法1条,刑訴法218条1項,刑訴法317条,警職法2条1項
判旨
違法に収集された証拠であっても、証拠収集の手続に憲法上の適正手続の保障を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の見地から不相当と認められない限り、その証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
警察官による所持品検査の手続に違法がある場合において、当該手続により得られた証拠の証拠能力が否定されるための要件(違法収集証拠排除法則の適用要件)が問題となる。
規範
違法収集証拠排除法則が適用されるためには、①証拠収集手続に憲法31条、35条等の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠として許容することが、将来の違法な捜査の抑制の見地から相当でないと認められる必要がある。
重要事実
警察官らが被告人に対して所持品検査を実施した。当該所持品検査の手続には何らかの違法が存在したが、原判決は、その違法が証拠能力を失わせなければならないほどの重大なものとはいえないと判断し、得られた証拠の証拠能力を肯定した。被告人側は、この手続違憲等を理由に上告した。
あてはめ
本件における警察官らの所持品検査には違法が認められる。しかし、当該違法は「証拠能力を失わせなければならないほどの重大な違法」とまではいえない。したがって、適正手続の保障を没却するような重大な違法(規範①)が存在せず、将来の違法捜査抑制の観点から排除を要する程度(規範②)にも至っていないと判断される。
結論
本件所持品検査に違法があっても、重大な違法とはいえないため、得られた証拠の証拠能力は否定されない。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則の肯認と、その適用を「重大な違法」に限定した最高裁の立場を確認する事案である。答案上では、捜査手続の違法性を認定した後の、証拠能力の有無を検討する段階で使用する。先行する所持品検査等の適法性を否定した上で、排除法則の2要件に当てはめて、証拠能力を認めるか否かの論理構成として定型的に用いられる。
事件番号: 平成6(あ)894 / 裁判年月日: 平成7年5月30日 / 結論: 棄却
警察官が職務質問に付随して行う所持品検査として被疑者の運転していた自動車内を承諾なく調べた行為及びこれに基づき発見された覚せい剤の所持を被疑事実とする現行犯逮捕手続に違法があり、引き続いて行われた採尿手続も違法性を帯びるが、警察官は、停止の求めを無視して自動車で逃走するなどの不審な挙動を示した被疑者について、覚せい剤の…