覚せい剤の所持の禁止、譲渡の制限および禁止に関する覚せい剤取締法(昭和二九年六月一二日法律第一七七号による改正前のもの)第一四条第一項、第一七条第三項、第四一条第一項第二号および第四号の各規定は、憲法第二二条に違反しない。
覚せい剤の所持の禁止、譲渡の制限および禁止に関する覚せい剤取締法の規定の合憲性
覚せい剤取締法(昭和29年6月12日法律177号による改正前のもの)14条1項,覚せい剤取締法(昭和29年6月12日法律177号による改正前のもの)17条3項,覚せい剤取締法(昭和29年6月12日法律177号による改正前のもの)41条1項2号,覚せい剤取締法(昭和29年6月12日法律177号による改正前のもの)41条1項4号,憲法22条
判旨
覚せい剤取締法が、法定の資格者以外の者による覚せい剤の譲渡や所持を原則として禁止し、これに罰則を科すことは、公共の福祉のために必要な制限であり、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法が、法定の資格者以外の者による覚せい剤の譲渡、譲受、所持等を一般に禁止し、罰則を科していることが、憲法22条1項(職業の自由)に違反し違憲とならないか。
規範
職業の自由(憲法22条1項)に対する制限が、公共の福祉のために必要かつ合理的な範囲内のものである場合には、同条に違反しない。薬物規制においては、当該薬物が濫用の原因となりやすく、国民の保健衛生に重大な危害を及ぼす恐れがある場合、その流通・所持を限定的な資格者にのみ認める規制は許容される。
重要事実
被告人は、法定の資格を有しないにもかかわらず、覚せい剤を所持し、かつ他者に譲り渡した。これにより、覚せい剤取締法違反として起訴されたが、被告人側は、資格のない者が覚せい剤を所持・譲渡したとしても必ずしも公共の福祉に反するとは限らず、同法による一律の禁止は憲法22条(職業選択の自由・営業の自由)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
覚せい剤は、濫用の因をなしやすく、国民の健康を著しく損なう危険性がある。覚せい剤取締法は、一方で適正な使用の途を確保しつつ、他方で法定の資格者以外の者による取扱を禁止している。これは、薬物の濫用による弊害を防止し、保健衛生上の安全を確保するという「公共の福祉」を目的とするものであり、その手段として資格制による厳格な管理を行うことは、必要かつ合理的な制限であると解される。
結論
覚せい剤取締法による所持・譲渡の禁止および罰則規定は、公共の福祉のために必要な制限であり、憲法22条1項に違反しない。
実務上の射程
職業の自由に対する制限の合憲性が問われる事案において、特に薬物や公衆衛生に関する強力な警察制限的規制を正当化する際の基礎的な判例として位置づけられる。答案上は、目的が公共の福祉に適合し、手段が必要かつ合理的であるという枠組みの中で、薬物の危険性を強調する論理として活用できる。
事件番号: 昭和48(あ)2557 / 裁判年月日: 昭和49年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚醒剤の使用に対する処罰規定は、輸入、輸出、所持、製造等の他態様と比較して常に犯情が軽いとは限らないため、憲法13条(自己決定権等)や14条(法の下の平等)に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が覚醒剤取締法違反(使用等)に問われた事案において、弁護人は覚醒剤の使用が輸入、輸出、所持、…