覚せい剤取締法一七条三項の規定する犯罪構成要件の内容はそれ自体明らかであるとして、違憲の主張が前提を欠くとされた事例
憲法31条
判旨
覚せい剤取締法17条3項に規定する「譲り渡し」及び「譲り受け」の語は、その犯罪構成要件の内容がそれ自体において明らかである。したがって、同条項は憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反しない。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法17条3項に規定される「譲り渡し」および「譲り受け」という構成要件の文言が、刑罰法規の明確性の原則(憲法31条)に照らして合憲といえるか。
規範
刑罰法規が憲法31条に違反するか否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、何が禁止され、どのような場合に処罰されるかの基準が読み取れる程度に明確であるかによって判断される。構成要件の内容が、その文言自体から客観的に一義的に、あるいは通常の解釈手法によって明らかであると認められる場合には、明確性を欠くものとはいえない。
重要事実
被告人は覚せい剤取締法違反(譲渡し、譲受け)で起訴された。これに対し、弁護人は、同法17条3項(当時)に規定されている「譲り渡し」および「譲り受け」という文言は、その意味内容が多義的であり不明確であるから、罪刑法定主義を定めた憲法31条に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
覚せい剤取締法における「譲り渡し」および「譲り受け」という用語は、一般に有償・無償を問わず覚せい剤の占有を移転させる行為を指すものとして、法実務上および日常用語として定着している。本判決は、これらの語が示す犯罪構成要件の内容について、それ自体において明らかであると判示した。すなわち、通常の判断能力を有する一般人の理解において処罰範囲を予見することが十分に可能であり、法執行機関の恣意的な運用を招くほど不明確ではないと判断される。
結論
覚せい剤取締法17条3項(譲渡し、譲受け)は明確性を欠くものではなく、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
本判決は、刑罰法規の明確性の原則に関するリーディングケースの一つである。答案上は、日常用語として広く用いられ、かつ他の法域(民法等)でも確立した概念については、特段の定義がなくとも「それ自体において明らか」として明確性を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5774 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
刑訴第一八一条第三項の規定は検察官のみが上訴した場合の規定であり、原審が被告人に刑訴第一八一条第一項により訴訟費用の負担を命じたとしても本件においては、被告人の控訴により生じた国選弁護人に関する費用の負担を命じたにすぎないのであるから所論違憲の主張は前提において採用できない。
事件番号: 昭和31(あ)300 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
覚せい剤取締法第一四条にいわゆる所持とは、必ずしも覚せい剤を物理的に把持することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあるをもつて足りると解すべきである。