一 覚せい剤を売却斡旋方を依頼してこれを他人に引き渡すときは、その所有権の転移の有無にかかわらず覚せい剤取締法第一七条にいう覚せい剤の「譲り渡し」にあたる。 二 覚せい剤取締法第四一条の二にいう「営利の目的で」とは、財産上の利益を得る目的をもつてなされる以上、一回かぎりのものでも差し支えなく必ずしも反覆継続的に利益を図るためになされることを要しない。
一 覚せい剤取締法第一七条にいう覚せい剤の「譲り渡し」の意義 二 覚せい剤取締法第四一条の二にいう「営利の目的で」の意義
覚せい剤取締法17条,覚せい剤取締法41条の2
判旨
覚せい剤取締法上の「譲り渡し」は所有権移転の有無を問わず、売却斡旋を依頼して他人に引き渡す行為を含む。また、同法「営利の目的」とは、単に財産上の利益を得る目的を意味し、反復継続性は不要である。
問題の所在(論点)
1. 覚せい剤の所有権が移転していない場合でも、売却斡旋に伴う引渡しは「譲り渡し」に該当するか。 2. 「営利の目的」の成立には、反復継続的に利益を図る意思が必要か、あるいは一回的な利益取得目的で足りるか。
規範
1. 覚せい剤取締法17条の「譲り渡し」とは、その所有権の移転の有無に拘らず、覚せい剤を他人に引き渡す行為を指す。 2. 同法41条の2の「営利の目的」とは、単に財産上の利益を得る目的をもってなされたことを意味し、一回限りのものであっても足り、必ずしも反復継続的に利益を図るためになされることを要しない。
重要事実
被告人Bは、覚せい剤の売却斡旋方を依頼され、これを他人に引き渡した。被告人側は、所有権が移転していないことや、反復継続的な利益追求がないことを理由に、法17条の譲り渡しおよび法41条の2の営利目的の成立を争った。
あてはめ
1. 被告人は、売却斡旋の依頼を受けて覚せい剤を他人に引き渡しており、この実態的な所持の移転がある以上、法的な所有権移転が未了であっても「譲り渡し」に該当すると評価される。 2. 被告人は財産上の利益を得る目的を有していたものであり、その行為が一回限りのものであったとしても、利益を得る主観的な意図がある以上、「営利の目的」があるといえる。
結論
被告人の行為は、覚せい剤の「譲り渡し」に該当し、かつ「営利の目的」も認められる。したがって、営利目的譲渡罪が成立する。
実務上の射程
覚せい剤取締法における「譲り渡し」の広汎性と、「営利の目的」の定義を明確にした重要判例である。答案上は、単なる事実上の引渡しでも譲渡にあたることや、業として行う必要がないことを指摘する際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和27(あ)5774 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
刑訴第一八一条第三項の規定は検察官のみが上訴した場合の規定であり、原審が被告人に刑訴第一八一条第一項により訴訟費用の負担を命じたとしても本件においては、被告人の控訴により生じた国選弁護人に関する費用の負担を命じたにすぎないのであるから所論違憲の主張は前提において採用できない。