原判決及び第一審判決は、被告人が本件麻薬を買受けて他に転売する目的をもつて交付を受けたという事実を認定しているのみならず、仮りに所論のように右の交付が所有権転移の意思ではされなかつたとしても、当裁判所の判例によれば、麻薬の売却方を依頼し他人に交付することは、旧麻薬取締法三条にいわゆる麻薬の譲渡にあたると解するのであるから、本件被告人が他に売却する意図をもつて麻薬の交付を受けた以上、これを旧麻薬取締法四条三号にいわゆる麻薬の譲受にあたると解すべきこと自から明らかである。(昭和二六年(あ)第三六三四号同二七年四月一七日第一小法廷判決、刑集六巻四号六七八頁参照。)
旧麻薬取締法第四条三号にいわゆる麻薬の譲受にあたる一事例
旧麻薬取締法4条3号
判旨
麻薬を他に転売または売却する目的で交付を受ける行為は、たとえ所有権移転の意思が伴わない場合であっても、麻薬取締法上の「譲受」に該当する。
問題の所在(論点)
麻薬取締法における「譲受」の意義について、所有権移転の意思や実態がない場合(転売目的の受領や仲介目的の受領)であっても、これに該当するか。
規範
麻薬取締法(旧法含む)における「譲受」とは、必ずしも民法上の所有権移転を伴うことを要しない。麻薬の売却を依頼して他人に交付する行為が「譲渡」に当たる以上、その対価支払の有無や所有権移転の成否にかかわらず、転売等の目的で交付を受ける行為は「譲受」に該当すると解するのが相当である。
重要事実
被告人は、本件麻薬を買受けて他に転売する目的をもって、その交付を受けた。被告人側は、自身は単なる仲介人に過ぎず、所有権移転の意思で交付を受けたものではないため、旧麻薬取締法4条3号にいう「譲受」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は麻薬を他に転売する目的で交付を受けている。判例の趣旨に照らせば、麻薬の売却を依頼して交付する側が「譲渡」に当たる以上、これを受ける側もまた「譲受」に当たると解すべきである。したがって、仮に被告人が主張するように所有権移転の意思が欠けていたとしても、転売の意図をもって交付を受けた以上、同法上の「譲受」としての評価を妨げるものではない。
結論
被告人が転売目的で麻薬の交付を受けた行為は、旧麻薬取締法4条3号の「譲受」に該当する。
実務上の射程
薬物犯罪における「譲渡・譲受」が、民法上の権利移転概念に縛られず、事実上の占有の移転(薬物の流通促進に資する行為)を広く含むことを示す射程を持つ。答案上は、所持より重い譲受罪の成否を検討する際、単なる保管や運搬を超えた「流通ルートへの介入」が認められる場合に本判例を援用して「譲受」を肯定する根拠とする。
事件番号: 昭和27(あ)533 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬の売却を依頼して他人に交付する行為は、麻薬取締法にいう「譲渡」に該当する。 第1 事案の概要:被告人Bは、麻薬の売却を他人に依頼し、その売却のために麻薬を当該他人に交付した。弁護人は、このような売却の依頼に伴う交付が、同法にいう「譲渡」には当たらないと主張して上告した。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和28(あ)2803 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
一 旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第三条にいう「譲り渡し」とは、所有権の移転を目的とする麻薬の授受の場合に限られない。 二 塩酸モルヒネ末を所持する者が、これを他人に交付して注射液の製剤を依頼し、その後注射液として引渡を受けて所持する場合は、塩酸モルヒネ末の所持罪と注射液の所持罪との二罪が成立し併合罪となる。…