旧麻薬取締法三条一項にいう譲渡は、同法が麻薬に関するあらゆる行為を取締の対象とすることによつて公衆衛生の保持を図つた趣旨から見て、麻薬の移転に関する行為は所有機の移転を伴うものに限らず、広く譲渡の観念中に包含せしめたものと解するのを相当とするのである(昭和二六年(あ)三六三四号同二七年四月一七日第一小法廷判決、刑集六巻四号六七八頁、同法四条の譲渡につき昭和二七年(あ)三三七三号同二九年八月二〇日第二小法廷判決)。
旧麻薬取締法第三条という「麻薬の譲渡」
麻薬取締法(昭和23年法律第123号)3条
判旨
麻薬取締法にいう「譲渡」は、公衆衛生の保持という法の趣旨に鑑み、所有権の移転を伴うものに限らず、広く麻薬の占有の移転に関する行為を包含すると解すべきである。
問題の所在(論点)
旧麻薬取締法3条1項にいう「譲渡」の概念に、所有権の移転を伴わない所持・占有の移転が含まれるか。
規範
麻薬取締法における「譲渡」とは、麻薬に関するあらゆる行為を取り締まることで公衆衛生の保持を図るという法の目的に照らし、所有権の移転を伴うものに限られない。麻薬の移転に関する行為は、広く譲渡の観念に包含されると解するべきである。
重要事実
被告人らは、旧麻薬取締法3条1項(現在の麻薬及び向精神薬取締法に相当)に違反して麻薬を「譲渡」したとして起訴された。弁護人は、当該「譲渡」には所有権の移転が伴っておらず、単なる所持(占有)の移転にすぎないため、同法上の譲渡罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
麻薬取締法は、麻薬の流通を厳格に管理することで公衆衛生上の危害を防止することを目的としている。このような法の趣旨からすれば、所有権の帰属という民法上の形式にとらわれず、実質的に麻薬の所持が他者へ移転する行為そのものを規制対象とすべきである。したがって、本件において所有権の移転が認められないとしても、麻薬の移転行為があった以上、「譲渡」に該当すると評価される。
結論
被告人らの行為は「譲渡」に該当し、麻薬取締法違反が成立する。上告棄却。
実務上の射程
行政取締法規における「譲渡」の概念を、民事上の所有権移転よりも広く解釈する際の根拠となる。薬物犯罪だけでなく、銃砲刀剣類所持等取締法など、公衆衛生や公共の安全を目的とする他の取締法規の解釈においても、占有の移転を重視する判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和27(あ)533 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬の売却を依頼して他人に交付する行為は、麻薬取締法にいう「譲渡」に該当する。 第1 事案の概要:被告人Bは、麻薬の売却を他人に依頼し、その売却のために麻薬を当該他人に交付した。弁護人は、このような売却の依頼に伴う交付が、同法にいう「譲渡」には当たらないと主張して上告した。 第2 問題の所在(論点…