内科、小児科、外科、産婦人科の診断書を経営し麻薬施用者、麻薬管理者の免許を受けている内科、小児科の医師Aが、同診断書で産婦人科の診断に従事する産婦人科の医師で麻薬取扱者の免許を受けていないBに、Bが右診療所またはBの自宅で患者に施用するために麻薬を譲渡する行為は、旧麻薬取締法(昭和二三年七月法律第一二三号)第三条第二項にいう、麻薬取扱者が「その業務の目的以外のために」麻薬を譲渡する場合に該当する。
医師が他の医師に麻薬を譲渡する行為と旧麻薬取締法第三条第二項
旧麻薬取締法2条1項10項,旧麻薬取締法3条1項,旧麻薬取締法2項,旧麻薬取締法57条
判旨
麻薬取扱者がその業務の目的以外のために麻薬を譲渡した場合には、旧麻薬取締法3条2項にいう「その業務の目的以外のために」麻薬を譲渡した場合に該当し、処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
麻薬取扱者が麻薬を譲渡した場合において、どのような場合に旧麻薬取締法3条2項違反の罪が成立するか。特に「その業務の目的以外のために」という要件の該非が問題となる。
規範
麻薬取扱者の資格を有する者であっても、法が認めた本来の業務目的から逸脱して麻薬を譲渡する行為は、旧麻薬取締法3条2項(現行の麻薬及び向精神薬取締法に相当する規定)の禁止する「その業務の目的以外」の譲渡にあたり、違法となる。
重要事実
麻薬取扱者の資格を持つ被告人が、麻薬を譲渡した。当該譲渡が被告人の業務本来の目的(治療や研究等)に基づくものであるか、あるいはそれ以外の目的(営利や私的目的等)によるものであるかが争点となったが、下級審判決によれば、被告人の行為は業務の目的外で行われたものであった。
あてはめ
本件被告人は麻薬取扱者の立場にあったが、第一審および第二審の判示によれば、その譲渡行為は業務遂行上の正当な目的によるものではなかった。このような業務外の目的で行われた譲渡は、旧麻薬取締法3条2項が予定する規制の対象外とはいえず、同条項にいう「その業務の目的以外のために」譲渡した場合に該当すると評価される。
結論
被告人の行為は旧麻薬取締法3条2項に該当するため、有罪とした原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
特別法犯における「業務の目的」の解釈を示す。資格保持者による行為であっても、実質的に本来の職務権限を逸脱している場合には、構成要件該当性が認められることを確認した点に意義がある。現在の麻薬及び向精神薬取締法等の解釈においても同様の論理が妥当する。
事件番号: 昭和28(あ)3924 / 裁判年月日: 昭和30年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】学問研究の目的ではなく、営利の目的で麻薬を譲り渡した行為については、麻薬取締法による禁止の合憲性を問うまでもなく、適法な学問の自由の行使等には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aは、改正前の麻薬取締法が定める制限に違反し、麻薬の売買または譲渡を行った。弁護人は、当該禁止規定が憲法の精神に違反す…
事件番号: 昭和28(あ)2803 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
一 旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第三条にいう「譲り渡し」とは、所有権の移転を目的とする麻薬の授受の場合に限られない。 二 塩酸モルヒネ末を所持する者が、これを他人に交付して注射液の製剤を依頼し、その後注射液として引渡を受けて所持する場合は、塩酸モルヒネ末の所持罪と注射液の所持罪との二罪が成立し併合罪となる。…