判旨
学問研究の目的ではなく、営利の目的で麻薬を譲り渡した行為については、麻薬取締法による禁止の合憲性を問うまでもなく、適法な学問の自由の行使等には当たらない。
問題の所在(論点)
麻薬の譲渡し等の行為を禁止する麻薬取締法の規定が、学問の自由等を保障する憲法の趣旨に反して違憲とならないか。特に、学問研究目的ではない営利目的の行為に違憲の主張が及ぶか。
規範
憲法が保障する学問の自由(23条)等の精神に照らしても、その実質が学問研究等の正当な目的を欠き、もっぱら営利を目的として麻薬の売買・譲渡を行う行為については、法令による規制の合理性を否定し得ない。
重要事実
被告人Aは、改正前の麻薬取締法が定める制限に違反し、麻薬の売買または譲渡を行った。弁護人は、当該禁止規定が憲法の精神に違反すると主張したが、原判決によれば、被告人の行為は学問研究のためではなく、営利の目的をもって行われたものであった。
あてはめ
本件において、被告人Aの行為は学問研究を目的とするものではなく、営利の目的で行われたものである。このような営利目的の麻薬取引は、学問の自由等の憲法上の要請を充足する活動とはいえず、規制の合憲性を争う前提を欠く。したがって、違憲の主張は本件の具体的な事実関係に照らして適切ではない。
結論
被告人の行為は営利目的であり、麻薬取締法の規定を違憲とする主張は不適法である。上告棄却。
実務上の射程
学問の自由(23条)の限界を示す事例。特定の規制が憲法違反であると主張する場合でも、当該被告人の行為がその権利の行使といえる実態(本件では学問研究目的)を欠く場合には、違憲の主張自体が具体的妥当性を欠き、上告理由として不適法とされる可能性がある。
事件番号: 昭和26(あ)5155 / 裁判年月日: 昭和28年7月17日 / 結論: 棄却
原裁判所が本件についてなした裁判が、具体的に公正妥当を欠くとの理由で、右裁判を目して憲法三二条(論旨に三三条とあるは誤記と認める)に違反するものということのできないことは当裁判所の判例の趣旨に徴し極めて明かである(昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決参照)。