判旨
麻薬取扱者でない者が、麻薬の譲受けおよび譲渡を行った行為は、麻薬取締法(当時)の定める禁止規定に違反し、同法に基づく処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
麻薬取扱者でない者が麻薬を譲り受け、または譲渡した場合に、麻薬取締法のどの条項が適用され、処罰の対象となるか。
規範
麻薬取扱者の資格を持たない者が、法で禁じられた麻薬の譲受けまたは譲渡を行った場合、麻薬取締法(現:麻薬及び向精神薬取締法)の禁止規定に違反し、同法の罰則規定が適用される。
重要事実
被告人は、麻薬取扱者の免許等を有していないにもかかわらず、塩酸モルヒネ粉末を譲り受け、さらに塩酸ヂアセチルモルヒネ(ヘロイン)注射液1CC入アンプルを譲渡した。これに対し、原審は麻薬取締法3条1項、57条、4条3号、57条等を適用して有罪判決を下した。被告人側は憲法違反および量刑不当を理由に上告した。
あてはめ
本件被告人は「麻薬取扱者でない」という属性を有しており、その者が「塩酸モルヒネ粉末」を譲り受け、かつ「塩酸ヂアセチルモルヒネ注射液」を譲渡した事実は原審により適法に確定されている。これらの行為は、麻薬取扱者以外の者による麻薬の取扱いを禁ずる当時の麻薬取締法の各規定(3条1項、4条3号等)の構成要件に該当する。弁護人は同法4条4号等の適用を前提として違憲を主張するが、原審は当該条文を適用しておらず、上告理由は前提を欠く。したがって、確定事実に照らし、原審が同法の罰則(57条等)を適用した判断は正当である。
結論
被告人の行為には麻薬取締法が正当に適用されており、有罪とした原判決に憲法違反や法令適用の誤りはない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
特別法犯(薬物犯罪)における主体(麻薬取扱者か否か)と行為(譲受・譲渡)の類型化を確認する事例。現代の「麻薬及び向精神薬取締法」下でも、無免許者による譲渡・譲受の処罰根拠を検討する際の基礎的な当てはめモデルとして機能する。
事件番号: 昭和27(あ)3941 / 裁判年月日: 昭和29年3月26日 / 結論: その他
一 審判の対象として認定されていない麻薬を没収した違法ある第一審判決を容認した原判決は、刑訴第四一一条第一号により破棄を免れない。 二 麻薬施用者たる医師が塩酸モルヒネ水溶液を中毒症状を緩和するため自己の身体に施用したとの犯罪事実を認定し、その供用物件として塩酸モルヒネ散を没収した違法ある第一審判決を容認した原判決は刑…