麻薬の売却斡旋方を依頼してこれを他人に引渡すがごときは、麻薬取締法第二四条第一項にいわゆる麻薬の譲渡にあたる
麻薬取締法第二四条第一項にいわゆる麻薬の譲渡にあたる事例
麻薬取締法24条1項,麻薬取締法12条1項
判旨
麻薬取締法における「譲り渡し」とは、他へ売却斡旋方を依頼して引渡す行為を含むと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
他者に対し売却の斡旋を依頼して麻薬を引き渡す行為が、麻薬取締法における「譲り渡し」の該当するか。
規範
麻薬取締法上の「譲り渡し」とは、有償・無償を問わず、麻薬の所持を移転させる行為を広く含む。これには、直接の売買のみならず、第三者に対して売却の斡旋を依頼し、その履行として麻薬を当該第三者等に引き渡す行為も含まれる。
重要事実
被告人Aは、麻薬を他へ売却するよう斡旋を依頼し、その目的で麻薬の引渡しを行った。弁護人は、このような斡旋依頼に伴う引渡しが麻薬取締法上の「譲り渡し」に該当するかを争い、上告を申し立てた。
あてはめ
被告人Aは、単に麻薬を保持していただけでなく、他者に対して「売却の斡旋」を依頼している。この依頼に基づき麻薬の「引渡し」を行うことは、実質的に麻薬の事実上の支配を他者に移転させる行為に他ならない。したがって、このような流通を促進させる態様での引渡しは、同法が規制対象とする「譲り渡し」の概念に包含されると評価できる。
結論
被告人の行為は麻薬取締法の譲り渡しに該当する。本件上告を棄却する。
実務上の射程
薬物事犯における「譲り渡し」の意義を広く解釈した基本的判例である。直接の譲受人だけでなく、売却仲介者(斡旋者)への引渡しであっても「譲り渡し」が成立することを示す際、規範の根拠として引用できる。
事件番号: 昭和28(あ)194 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
原判決及び第一審判決は、被告人が本件麻薬を買受けて他に転売する目的をもつて交付を受けたという事実を認定しているのみならず、仮りに所論のように右の交付が所有権転移の意思ではされなかつたとしても、当裁判所の判例によれば、麻薬の売却方を依頼し他人に交付することは、旧麻薬取締法三条にいわゆる麻薬の譲渡にあたると解するのであるか…