覚せい剤取締法四一条の二第二項にいう「営利の目的」とは、犯人がみずから財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう。
覚せい剤取締法四一条の二第二項にいう「営利の目的」の意義
覚せい剤取締法41条の2第1項,覚せい剤取締法41条の2第2項」
判旨
覚せい剤取締法における「営利の目的」とは、犯人が自ら財産上の利益を得る場合に限らず、第三者に得させることを動機・目的とする場合も含まれる。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法上の加重処罰規定(営利目的輸出入等)の要件である「営利の目的」には、自己が利益を得る目的だけでなく、他人に利益を得させる目的も含まれるか。条文上の「営利の目的」の意義が問題となる。
規範
覚せい剤取締法41条の2第2項(および他の薬物犯罪等)に規定される「営利の目的」とは、犯人がみずから財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう。
重要事実
被告人は、共犯者らが香港から日本へ覚せい剤を密輸入・密売する組織の一員であることを熟知していた。被告人は、かつて共犯者から受けた恩義に報いるなどの気持ちから、共犯者らに協力して積極的に犯行に加担した。被告人自身に直接の報酬等の約束はなかったが、専ら共犯者らに財産上の利益を得させることを動機・目的としていた。
あてはめ
被告人は、共犯者が営利目的を有する組織であることを認識した上で、個人的な恩義に報いるために協力している。この場合、被告人の主観において、自ら財産上の利益を得る意図は認められない。しかし、被告人の行動は、専ら共犯者(第三者)らに財産上の利益を得させることを意図してなされたものである。規範に照らせば、このような第三者に財産上の利益を得させる動機・目的がある場合には、「営利の目的」があるといえる。
結論
被告人には「営利の目的」が認められ、覚せい剤取締法41条の2第2項が成立する。
実務上の射程
本判決は、薬物事犯における営利目的の定義を確立した。自己に利益が帰属しない「お付き合い」や「恩返し」の動機であっても、相手方に利益を得させる認識があれば営利目的が肯定される。答案上、実行行為者が報酬を得ていない場合でも、依頼者側の利益獲得を目的としていれば本規範により営利目的を肯定すべきである。
事件番号: 昭和35(あ)1874 / 裁判年月日: 昭和35年12月12日 / 結論: 棄却
一 覚せい剤を売却斡旋方を依頼してこれを他人に引き渡すときは、その所有権の転移の有無にかかわらず覚せい剤取締法第一七条にいう覚せい剤の「譲り渡し」にあたる。 二 覚せい剤取締法第四一条の二にいう「営利の目的で」とは、財産上の利益を得る目的をもつてなされる以上、一回かぎりのものでも差し支えなく必ずしも反覆継続的に利益を図…