麻薬取締法第六四条が、営利の目的の有無により刑の軽重を区別しているのは、刑法第六五条第二項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」にあたる。
麻薬取締法第六四条と刑法第六五条第二項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」
刑法65条2項,麻薬取締法64条
判旨
麻薬取締法における「営利の目的」は、刑法65条2項にいう「身分」に該当する。そのため、営利の目的を有しない者が、営利の目的を有する共犯者と共同して麻薬を輸入した場合であっても、非身分者には同法64条1項の刑が科される。
問題の所在(論点)
麻薬取締法における「営利の目的」が、刑法65条2項にいう「身分」に該当するか。また、営利の目的を有しない者が営利目的の共犯者と共同正犯となった場合、いかなる刑を科すべきか。
規範
麻薬取締法64条1項(非営利輸入)と2項(営利目的輸入)の関係は、犯人が営利の目的を有するか否かという「犯人の特殊な状態の差異」によって刑の軽重を区別するものである。したがって、営利の目的は刑法65条2項にいう「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキ」に該当する。共犯関係においては、刑法65条2項に基づき、各人の身分の有無に従って、身分者には重い刑を、非身分者には通常の刑を個別に科すべきである。
重要事実
被告人は、共犯者Aが営利の目的を有していることを知りながら、Aと共同して麻薬を輸入した。しかし、被告人自身には営利の目的は認められなかった。原審および第一審は、共犯者が営利目的であることを認識していれば、自らに営利目的がなくとも重い処罰を規定する麻薬取締法64条2項の罪が成立すると判断し、被告人に同条項の刑を科した。
あてはめ
麻薬取締法64条2項は、営利の目的という特定の目的を有する者の処罰を重くしており、これは犯人の個人的な属性・状態に基づき刑を峻別するものである。本件被告人は、共犯者Aの営利目的を認識してはいたが、被告人自らは営利目的を有していなかった。刑法65条2項の法理によれば、加重的な身分がない者には通常の刑を科すべきであるから、被告人には営利の目的があることを前提とする64条2項ではなく、通常の輸入罪である同条1項を適用すべきといえる。
結論
被告人には、麻薬取締法64条1項の罪が成立し、同条項の刑が科される。営利の目的を欠く被告人に同条2項を適用した原判決は破棄される。
実務上の射程
加減身的役割を果たす「目的」が刑法65条2項の身分に含まれることを明示した重要判例。答案上では、営利目的等の目的犯が共犯となる場面で、65条2項を適用し「連帯的に構成されるが、科刑は個別」という論理を展開する際の根拠となる。
事件番号: 昭和55(あ)1558 / 裁判年月日: 昭和57年6月28日 / 結論: 棄却
覚せい剤取締法四一条の二第二項にいう「営利の目的」とは、犯人がみずから財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう。
事件番号: 昭和53(あ)2288 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受けとその麻薬の譲渡しは、たとえそれが営利の目的で行われたものでも、犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものではなく、右両罪は併合罪の関係にある。