一 麻薬取締法第六四条の二第二項にいう営利の目的とは、麻薬の交付、所持等の行為によつて財産上の利益を得ることを動機とする場合をいい、共犯者に融通していた金員の回収を図ることが、犯行に加担した動機である場合もこれに含まれる。 二 共犯者が被告人の自宅に持参した麻薬粉末約二六〇グラムを、売りさばきに便ならしめるため、一〇〇グラム単位に計量小分けする際、右共犯者と共同所持した行為と、同日右麻薬粉末のうち約一〇〇グラム包一個を、右共犯者とともに近くの喫茶店に携行し、売りさばき方を依頼して第三者に交付した行為との間には、それがともに営利の目的に出た場合であつても、牽連関係は成立せず、両者は併合罪の関係となる。
一 麻薬取締法第六四条の二第二項にいう営利の目的の意義 二 麻薬粉末を計量小分けするため所持する行為と売りさばきを依頼してその一部を他人に交付する行為との罪数
麻薬取締法64条の2,刑法45条,刑法54条1項
判旨
麻薬取締法上の営利の目的とは、薬物交付等の動機が財産上の利益を得る目的に出たことを指し、貸金回収目的でもこれに該当する。また、営利目的の共同所持行為と、その一部を第三者に売りさばく目的で交付した行為は、牽連関係に立たず併合罪となる。
問題の所在(論点)
1. 貸金回収という動機が「営利の目的」に該当するか。2. 麻薬の営利目的共同所持罪と営利目的交付罪の罪数関係(牽連関係の成否)。
規範
1. 麻薬取締法における「営利の目的」とは、麻薬の交付、所持等の行為の動機が、自己または他人のために財産上の利益を得る目的に出たことをいう。2. 薬物の小分けによる共同所持罪と、その一部の譲渡し(交付)罪との関係については、手段・結果の関係にあるとはいえず、牽連関係(刑法54条1項後段)は成立しない。
重要事実
被告人は、共犯者が自宅に持参した麻薬粉末約260gを、売りさばきやすくするために100g単位に計量して小分けする際、共犯者と共同所持した。同日、被告人はそのうち約100gの包を共犯者と共に喫茶店へ携行し、第三者に売りさばきを依頼して交付した。被告人がこれらの犯行に加担した動機は、共犯者に融通していた金員の回収を図ることにあった。
あてはめ
1. 被告人の動機は共犯者へ融通した金員の回収にあり、これは自己の財産上の利益を得る目的に他ならないため、営利の目的が認められる。2. 260gの麻薬を小分けにして共同所持した行為と、その一部である100gを第三者に譲渡した行為は、たとえ一連の営利目的の下で行われたとしても、一方が他方の手段または結果という関係にはない。したがって、両罪に牽連関係は成立せず、別個の罪として併合罪の関係に立つ。
結論
被告人に営利の目的を認め、共同所持罪と交付罪を併合罪とした原判断は正当である。
実務上の射程
営利目的の広汎な解釈を示すとともに、所持と譲渡の罪数関係につき、通例の密接な関係があっても当然には牽連関係を認めない実務の確定的な立場を示すものである。
事件番号: 昭和53(あ)2288 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受けとその麻薬の譲渡しは、たとえそれが営利の目的で行われたものでも、犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものではなく、右両罪は併合罪の関係にある。