論旨は要するに被告人の原判示第一の本件麻藥の所持使用と第二の授與及び販賣の各所爲は連續犯と認定すべきに拘わらず原判決がこれを併合罪と認めたことが違法であると主張するのである。しかし本件麻薬の所持使用と授與販賣とはいずれもその罪質および處罰法條を同じくするものではあるが、原判決の認定によれば判示第一の所爲と第二の所爲との間には犯意繼續の關係が認められていないのである。即ち原審は第一の所爲は單に自己に注射して使用したものであり第二の所爲は他人に麻藥を授與又は販賣したものであるから兩者は單一の意思の發動に出でたものでないと認めているのであつて、またかように認めたことは何等實驗則にも反しないからこれを連續犯とせず併合罪としたことは少しも違法ではない。従つて論旨は採用することができない。
短期間内になされた麻藥の所持使用と授與販賣の所爲と併合罪の適否
麻藥取締規則56條1項,麻藥取締規則42條,刑法45條,刑法22條,刑法23條,刑法54條,刑法55條
判旨
麻薬の所持・使用行為と、他者への授与・販売行為は、罪質や処罰法条が共通していても、犯意の継続性が認められない場合には連続犯とはならず、併合罪として処理される。
問題の所在(論点)
麻薬の自己使用(所持・使用)と、他者への譲渡(授与・販売)という、罪質を同じくする一連の行為について、これらを連続犯と解すべきか、それとも併合罪(刑法45条前段)と解すべきかが問題となる。
規範
連続犯(旧刑法55条)の成否については、各行為の罪質及び処罰法条が同一であることに加え、各行為が単一の犯意の発動、すなわち犯意の継続性に基づいているか否かによって判断される。単一の意思によるものと認められない別個の態様の行為については、併合罪として扱うべきである。
重要事実
被告人は、第一の行為として自ら麻薬を注射して所持・使用し、第二の行為として他人に麻薬を授与および販売した。原審は、これら二つの行為について、一方は自己使用を目的とし、他方は他者への譲渡を目的とするものであるから、単一の意思に基づく犯意の継続関係は認められないと認定した。
あてはめ
本件において、第一の行為は自己に対する注射・使用であり、第二の行為は他人に対する授与・販売である。これらは行為の目的や態様が明らかに異なり、単一の犯意に基づいた一連の行動とは認められない。したがって、両者の間には犯意の継続性が存在しないという原審の判断は、実験則に反するものではなく妥当である。
結論
被告人の第一の所為と第二の所為は連続犯ではなく、併合罪として処断される。
実務上の射程
現行刑法下では連続犯の規定は削除されているが、複数の行為が包括一罪となるか、あるいは併合罪となるかの区別において、本判決が示した「犯意の継続性(単一の意思)」という基準は、現在でも罪数論における重要な判断要素として機能する。
事件番号: 昭和24(れ)2770 / 裁判年月日: 昭和25年7月21日 / 結論: 棄却
麻藥取締規則(昭和二一年厚生省令第二五號)施行中において不法に麻藥を所持した行爲とその所持者が自らこれを自己の身体に使用した行爲とは各別罪を構成する
事件番号: 昭和53(あ)2288 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受けとその麻薬の譲渡しは、たとえそれが営利の目的で行われたものでも、犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものではなく、右両罪は併合罪の関係にある。