麻藥取締規則(昭和二一年厚生省令第二五號)施行中において不法に麻藥を所持した行爲とその所持者が自らこれを自己の身体に使用した行爲とは各別罪を構成する
麻藥を不法に所持する行爲とこれを自己の身体に使用する行爲とは別罪か
麻藥取締規則(昭和21年厚生省令25號)23條,麻藥取締規則(昭和22年厚生省令25號)42條,麻藥取締規則(昭和21年厚生省令56條)56條,刑法45條
判旨
麻薬の所持行為と使用行為は、それぞれの処罰根拠が統制管理の維持と劇薬濫用の防止という異なる点にあるため、刑法54条1項後段の牽連犯にはあたらず、併合罪として処断される。
問題の所在(論点)
麻薬の所持罪と使用罪が、刑法54条1項後段にいう「犯罪の手段又は結果である行為」にあたり、牽連犯として一罪で処断されるべきか、それとも併合罪となるか。
規範
麻薬の所持行為と使用行為が刑法54条1項後段の牽連犯(手段・結果の関係)にあたるか否かは、各禁止規定の法意及び行為の態様に照らして判断すべきである。麻薬の所持は厳重な統制管理の維持を目的として処罰され、使用は劇薬濫用の危険防止を目的として処罰される。また、所持は必ずしも使用のみを目的とするものとは限らないため、両者は当然に手段・結果の関係にあるとはいえず、併合罪(刑法45条)の関係に立つ。
重要事実
被告人は、麻薬取扱者の免許がないにもかかわらず、塩酸モルヒネ5グラムを所持し、かつこれを使用したとして、当時の麻薬取締規則違反に問われた。被告人は麻薬中毒患者であった。原審は所持行為と使用行為を併合罪として処断したが、弁護人は、使用のための所持は手段と結果の関係にあるとして、牽連犯として処断すべきであると主張して上告した。
あてはめ
麻薬取締規則が所持を罰するのは麻薬の統制管理を紊すことを防ぐためであり、使用を罰するのは劇薬濫用の危険を防止するためであって、両者の処罰根拠は別個である。また、麻薬の所持は、必ずしも自己または他人の身体に使用するためだけに為されるものではない。したがって、所持と使用の間に必然的な手段・結果の関係を認めることはできず、両行為は独立した犯罪として評価されるべきである。本件においても、被告人が塩酸モルヒネを所持した行為と、その後に使用した行為は別個の目的・法益侵害を有するものといえる。
結論
被告人による麻薬の所持行為と使用行為に牽連犯の関係は認められず、併合罪として処断した原判決は正当である。
実務上の射程
特別法犯における罪数判断の基準を示す。現代の薬物五法(覚醒剤取締法等)においても、所持と使用は別個の法益侵害(流通統制の侵害と保健衛生上の危害)を想定しているため、原則として併合罪とする実務慣行を支える。ただし、使用の不可欠な前提としての所持が極めて短時間である場合などの例外的な射程については、本判決の文言からは直ちに導けない。
事件番号: 昭和24(れ)2378 / 裁判年月日: 昭和24年12月28日 / 結論: 棄却
論旨は要するに被告人の原判示第一の本件麻藥の所持使用と第二の授與及び販賣の各所爲は連續犯と認定すべきに拘わらず原判決がこれを併合罪と認めたことが違法であると主張するのである。しかし本件麻薬の所持使用と授與販賣とはいずれもその罪質および處罰法條を同じくするものではあるが、原判決の認定によれば判示第一の所爲と第二の所爲との…
事件番号: 昭和25(れ)1721 / 裁判年月日: 昭和26年2月22日 / 結論: 棄却
原判決が所論の刑法第六〇条を明示していないことは所論のとおりであるが、その判示第三として「被告人Aは阿片末の売却斡旋方依頼を受け更に被告人Bに依頼してここに右両被告人は共同して他に売却するためにC方に同行持参する迄共同所持し」と例示しているから、原判決は被告人B相被告人Aの両名の判示阿片末所持の犯行について刑法第六〇条…