麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも解され、いずれにしても併合罪の存することが明白な案件であるから、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
麻薬の譲受行為とその所持とが併合罪となる一事例
麻薬取締法3条,刑法45条,刑訴法411条
判旨
麻薬の譲受行為と、その後の運搬・他人との共同所持については、場所的・主体的な差異から独立した所持罪が成立し、併合罪(刑法45条)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
麻薬の譲受行為と、その譲り受けた麻薬の所持行為について、後者が前者の不可罰的事後行為(または牽連一罪)として一罪となるか、あるいは別個に独立した罪として併合罪となるか。
規範
不可罰的事後行為または牽連一罪の成否について。先行する譲受行為と、その後の所持行為が、時間的・場所的に近接し、かつ主体的・客観的態様に質的変化がない場合には一罪(吸収関係)となり得る。しかし、所持の態様が譲受時の状況を超えて場所的に移動し、または関与者の拡大等により新たな法益侵害の危険を生じさせた場合には、譲受罪とは別に独立した所持罪が成立し、併合罪として処断される。
重要事実
被告人らは千葉市において麻薬の譲受行為を二回行った。その後、当該麻薬を東京都内に運搬し、さらに譲受けた被告人以外の他の者も加わって、都内において当該麻薬を所持した。
あてはめ
本件では、まず譲受行為が二回行われており、行為自体が反復されている。また、譲受場所が千葉市であるのに対し、所持行為は東京都内で行われており、運搬を伴う場所的移動が認められる。さらに、所持の段階では譲受人以外の他の被告人も参加して共同所持が行われている。これらの事実から、当該所持行為は単純な譲受の結果に伴う付随的な状態を超えており、独立した法益侵害の態様を備えた別個の行為と評価できる。したがって、譲受罪と所持罪は併合罪の関係にあるというべきである。
結論
麻薬の譲受と、その後の場所的移動・他人を交えた所持は併合罪となり、刑訴法411条を適用して破棄すべき法令違反には当たらない。
実務上の射程
不可罰的事後行為の限界を画する判例。先行行為(取得)に当然に含まれるといえない特段の事情(場所の移動、関与者の変更等)がある場合に、後続行為を別罪として構成する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和40(あ)2468 / 裁判年月日: 昭和42年6月23日 / 結論: 棄却
たとえ行為者が麻薬中毒者であつても、麻薬を他人から譲り受ける行為とこれを自己に施用する行為とは併合罪の関係となる。
事件番号: 昭和27(あ)411 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
麻薬中毒患者が自己の中毒症状緩和のため使用する目的をもつて、麻薬を譲り受け所持する場合には、右譲り受ける行為と所持する行為とはこれを包括し、一罪を構成するものと解すべきである。