たとえ行為者が麻薬中毒者であつても、麻薬を他人から譲り受ける行為とこれを自己に施用する行為とは併合罪の関係となる。
麻薬中毒者が麻薬を他人から譲り受ける行為とこれを自己に施用する行為との罪数
麻薬取締法12条1項,麻薬取締法64条の2第1項,刑法45条1項後段
判旨
麻薬中毒者が麻薬を他人から譲り受ける行為と、これを自己に施用する行為は、併合罪の関係に立つ。したがって、麻薬施用罪の確定判決の既判力は、その施用に供された麻薬の譲り受け行為には及ばない。
問題の所在(論点)
麻薬施用罪の確定判決の既判力(刑事訴訟法337条1号)は、その施用のために譲り受けた行為(譲受罪)に対しても及ぶか。麻薬中毒者による一連の行為の罪数関係が問題となる。
規範
同一の麻薬を対象とする行為であっても、譲り受け行為と自己への施用行為は、別個の犯罪を構成し、併合罪(刑法45条前段)の関係にある。したがって、一方の罪について確定判決が存在しても、他方の罪に対してその既判力は及ばない。
重要事実
被告人は昭和38年6月7日頃、麻薬5包を譲り受けたとして起訴された。しかし、そのうちの2包については、同年8月24日に確定した別の判決において「麻薬の施用」として既に事実認定されていた。被告人は、確定判決がある2包分については既判力が及び、本件の譲り受けの事実に含まれない(あるいは免訴されるべき)と主張した。
あてはめ
たとえ行為者が麻薬中毒者であり、自己の施用に供する目的で麻薬を譲り受けたとしても、譲受行為と施用行為は別個の社会的事実である。両罪は併合罪の関係に立つため、一方の事実(施用)について判決が確定したとしても、他方の事実(譲受)に対して既判力による遮断効が生じることはない。本件の譲り受け行為2包分についても、前訴の施用罪の確定判決に拘束されず、処罰することが可能である。
結論
被告人が譲り受けた麻薬を後に自己に施用した場合、両行為は併合罪となるため、施用罪の確定判決の既判力は譲受罪には及ばない。
実務上の射程
不可罰的事後行為や包括一罪ではなく併合罪と解する点に特徴がある。麻薬の自己消費目的であっても、譲受段階で独立した法益侵害・危険性があると評価される。罪数論における既判力の範囲を画定する際、実体法上の併合罪関係を前提とする実務上の判断枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和27(あ)411 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
麻薬中毒患者が自己の中毒症状緩和のため使用する目的をもつて、麻薬を譲り受け所持する場合には、右譲り受ける行為と所持する行為とはこれを包括し、一罪を構成するものと解すべきである。