判旨
一罪の関係にある事実の一部について確定判決が示された場合、その既判力は当該一罪の全部に及ぶため、判決に示されなかった他の部分について重ねて処罰することはできない。
問題の所在(論点)
一罪(所持罪)の一部について確定判決が示された場合、その既判力は当該一罪のうち判決で言及されなかった他の事実部分にも及ぶか。刑事訴訟法上の既判力の範囲が問題となる。
規範
所持罪のような一罪(単純一罪)として構成される犯罪については、その事実の一部について判断が示されれば、全部の事実について審判をしたことになり、判断に示されなかった他の部分についても既判力が及ぶ。
重要事実
被告人が特定の物の所持により罪に問われた事案において、その所持行為の一部についてのみ裁判所の判断が示された。弁護人は、判断が示されなかった残りの部分の事実関係について、既判力等の関係から法令違反や憲法39条違反を主張して上告した。
あてはめ
所持罪は、その性質上、継続的な状態を一罪として捉えるものである。このような一罪の一部について有罪・無罪等の判断が確定した場合、審判の対象は当該一罪の全体に及んでいると解される。したがって、判決文中に明示的に記載されなかった残りの事実部分についても、先行する確定判決の既判力により包含され、別異の審判をすることは許されない。
結論
本件のような所持罪の一罪においては、一部への判断で全部の事実を審判したことになり、既判力は全部に及ぶため、二重処罰の禁止を定めた憲法39条の趣旨に反するとの主張は前提を欠き、上告は棄却される。
実務上の射程
単純一罪(所持罪、監禁罪等)や包括一罪における既判力の客観的範囲を検討する際の基礎となる判例である。答案上では、公訴事実の同一性が認められる範囲内で既判力が及ぶことを説明する際、「一部の判断は全部の審判を意味する」という論理として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2207 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも…