判旨
先行する有罪判決の確定後に継続した薬物所持行為は、確定前の行為とは別個の新たな犯罪を構成し、一事不再理の効力は及ばない。
問題の所在(論点)
継続犯の性質を有する薬物所持罪において、先行する確定判決が存在する場合、その確定後の継続行為を処罰することは二重処罰の禁止(憲法39条)に抵触しないか。
規範
犯罪が継続的な性質を有する場合であっても、その間に確定判決が介在したときは、当該判決の前後で罪は分断される。したがって、判決確定後の行為については、新たな犯罪として処罰することが可能であり、憲法39条の一事不再理の原則に反しない。
重要事実
被告人は塩酸モルヒネ水溶液を所持していた。本件所持行為に先立ち、昭和26年7月7日に函館地方裁判所において別件の有罪判決が確定していた。検察官は、当該判決確定後も継続して行われていた新たな所持行為について起訴した。
あてはめ
本件で処罰の対象とされているのは、昭和26年7月7日の判決確定後における「新たな」塩酸モルヒネ水溶液所持行為である。判決が確定したことにより、それ以前の所持行為とそれ以降の所持行為との間の法的連続性は遮断される。したがって、確定後の行為を独立した犯罪として処罰することは、既判力の及ばない範囲の事実を対象とするものであるといえる。
結論
本件処罰は判決確定後の新たな行為を対象とするものであり、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
継続犯(所持罪、監禁罪等)や包括一罪における既判力の時的限界を画する。判決確定時を境に罪が分断されるという「分断論」の基礎となる判例であり、答案上は一事不再理の効力の限界を論じる際に、確定判決の介在による罪の分断を肯定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)2311 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 棄却
物の所持の継続中あらたにその物の所持を禁止する刑罰法規が施行せられた場合においては、その施行後継続せられる所持に対しては法令上特にその適用を除外する明文の存しない限りその新法規が適用せられる。