物の所持の継続中あらたにその物の所持を禁止する刑罰法規が施行せられた場合においては、その施行後継続せられる所持に対しては法令上特にその適用を除外する明文の存しない限りその新法規が適用せられる。
処罰規定の新設と所持罪
麻薬取締法3条,麻薬取締法4条,麻薬取締法57条,麻薬取締法65条,麻薬取締法74条
判旨
物の所持の継続中にその所持を禁止する新法が施行された場合、施行後は法的評価を異にする別個独立の所持が成立し、新法の罰則が適用される。
問題の所在(論点)
物の所持の継続中にその所持を禁止する新法が施行された場合、施行後の所持に対して新法の罰則を適用することが認められるか。行為の継続性と新法適用の可否が問題となる。
規範
所持という行為の個数は、単なる実力支配関係ではなく、社会生活上の個別性的意義や刑罰法規等の立法目的に基づいて決定される。したがって、物の所持の継続中に当該所持を禁止する刑罰法規が施行された場合、爾後は法的評価を異にした別個独立の所持が成立し、明文の除外規定がない限り新法が適用される。
重要事実
被告人は麻薬を所持していたところ、その所持の継続中に麻薬取締法が施行され、麻薬の所持が新たに禁止・処罰の対象となった。被告人は同法施行後も引き続き当該麻薬を所持していたため、麻薬取締法違反(所持)で起訴された。弁護人は、施行前の所持と施行後の所持は継続した一個の行為であり、施行後の所持に対して罰則を適用することは不当であると主張した。
あてはめ
所持の罪数評価は立法目的に照らして決すべきである。麻薬取締法の施行により、それまで適法または別個の評価を受けていた所持は、施行を境に「禁止された物の所持」という新たな法的評価を受けることとなる。本件では、被告人が施行後も所持を継続した以上、それは施行前とは別個独立の所持行為とみなされる。本件において特に適用を除外する明文の規定も存在しないため、施行後の状態に対して新法を適用することは、事後法の禁止等に触れるものではなく正当である。
結論
麻薬取締法施行後の所持を対象として同法の罰則を適用した原判決は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
継続犯や状態犯的側面を持つ所持罪において、法改正を跨ぐ場合の処断を基礎付ける判例である。所持の「継続」という事実があっても、法の施行という画期により法的評価が分断され、施行後の行為は独立して処罰対象となり得ることを示している。
事件番号: 昭和27(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所持罪のような継続犯において、不法所持の行為が法改正を跨いで継続した場合には、新法のみが適用される。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品(判決文からは物品名は不明だが文脈から不法所持の対象物)を所持していた。この所持行為は旧法の施行中から開始され、法改正を経て新法の施行後まで継続していた。被告…