麻薬所得の罪において、一個の所持が罰則施行前より罰則施行後まで引き続きなされかつ新旧両法に跨つてなされたとしても、その一個の所持全体に対して新法を適用して処置すべきものであつて、罰則施行前の部分を分割して無罪の言渡しをなしまたは旧法の部分を分割してこれに対し旧法および刑法第六条をも適用すべきものではない。
罰則施行前から施行後まで引き続きかつ新旧両法に跨つてなされた麻薬所持に対する適用
麻薬取締規則42条,麻薬取締規則56条1項1号,旧麻薬取締法3条1項,旧麻薬取締法57条1項,旧麻薬取締法74条,刑訴法335条,刑法6条
判旨
罰則の施行前から施行後まで継続して行われた一個の所持行為については、その全体に対して施行後の新法を適用して処断すべきであり、施行前後の期間を分割して判断する必要はない。
問題の所在(論点)
罰則施行前から施行後にわたって継続された一個の所持行為に対し、施行後の法律を適用して処罰することは、憲法39条前段の遡及処罰禁止の原則に反しないか。
規範
一個の所持行為が罰則の施行前から施行後まで継続して行われた場合、あるいは旧法から新法へ跨って継続された場合には、その一個の所持行為全体に対して新法を適用して処断すべきである。罰則施行前の部分を分割して無罪を言い渡したり、旧法の部分を分割して旧法を適用したりすべきではない。
重要事実
被告人は、昭和22年7月頃に交付を受けた塩酸モルヒネ注射液500本を、昭和25年3月頃まで自宅で所持していた。また、昭和21年6月4日以降、昭和25年8月20日頃まで、別の塩酸モルヒネ等を所持していた。この間、昭和23年7月10日に麻薬取締法が施行され、所持が禁止された。弁護人は、麻薬取締法施行前の所持を処罰することは憲法39条前段(遡及処罰の禁止)に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件におけるモルヒネの所持は、入手時期こそ麻薬取締法の施行前であるが、法改正後も継続して行われていた。一個の所持行為が新旧両法に跨る場合、その行為の全体が一体として評価されるべきである。したがって、行為が終了した時点での法律(新法)を適用することは、過去の終了した行為を後から処罰する「遡及処罰」には当たらず、法全体の趣旨として新法の禁止する所持に該当すると判断される。
結論
一個の所持全体に施行後の法律を適用することは憲法39条前段に違反せず、適法である。
実務上の射程
継続犯(所持、不法残留等)において、法改正や罰則の新設を跨いで状態が継続した場合の準拠法決定に関するリーディングケースである。答案上では、実行行為が法改正後も継続している以上、それは「施行後の行為」そのものであり、遡及処罰の問題は生じないという論理構成で活用する。
事件番号: 昭和27(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所持罪のような継続犯において、不法所持の行為が法改正を跨いで継続した場合には、新法のみが適用される。 第1 事案の概要:被告人は、特定の物品(判決文からは物品名は不明だが文脈から不法所持の対象物)を所持していた。この所持行為は旧法の施行中から開始され、法改正を経て新法の施行後まで継続していた。被告…