判旨
新法施行前に開始された継続的な行為であっても、新法施行後の行為が独立して処罰対象となる場合には、事後法の禁止(憲法39条前段)に抵触しない。
問題の所在(論点)
麻薬取締法施行前から継続していた麻薬所持について、法施行後の所持行為を処罰することが、憲法39条前段(事後法の禁止)に抵触するか。
規範
実行行為が継続的な性質を有する場合、新法施行時以前から行為が開始されていたとしても、新法施行後の期間における行為を捉えて処罰することは、憲法39条前段の事後法の禁止に違反しない。
重要事実
被告人は、麻薬取締法の施行前から麻薬類を所持していた。検察側は、同法施行後の昭和24年4月中旬当時における麻薬類の所持を犯罪事実として起訴した。これに対し、被告人側は法施行前の行為を含めて処罰することは憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件で処罰の対象となっているのは、麻薬取締法施行後である昭和24年4月中旬当時の所持行為である。所持は継続犯としての性質を有し、法施行後の各時点において独立して構成要件に該当する行為が行われているといえる。したがって、法施行後の事実を捉えて処罰する以上、過去に遡って行為を罰するものとは評価されない。
結論
本件処罰は、法施行後の行為を対象とするものであるから、憲法39条に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
法改正や新法の施行を跨いで継続される行為(所持、不法残留、監禁等)について、新法施行後の状態を捉えて起訴・処罰する場合の憲法上の合憲性を基礎付ける射程を持つ。答案上は、罪刑法定主義(事後法禁止)の論点において、継続犯の特則として簡潔に引用する。
事件番号: 昭和25(れ)1448 / 裁判年月日: 昭和26年7月20日 / 結論: 棄却
一 麻薬取締法第三条第一項但書には「但しこの法律の規定により麻薬を麻薬施用者から施用のため交付を受け又は麻薬小売業者若しくは家庭麻薬小売業者から譲り受け若しくは譲り受けた者がその麻薬を所持することはこの限りではない」と規定してあるから、この但書の適用のある場合は麻薬取締法の規定によつて麻薬の交付を受け、又は譲り受けた者…