判旨
覚せい剤等の禁制品の譲受に伴う握持行為であっても、譲受行為とは別に、独立した所持の事実が認められる場合には、譲受罪とは別に所持罪が成立し得る。
問題の所在(論点)
禁制品の譲り受けの際に生じる一時的な握持行為が、譲受罪とは別に独立した「所持」罪を構成するか、あるいは譲受罪に吸収される付随的行為にすぎないか。
規範
譲受に伴う一時的な保持(握持)であっても、単なる譲受行為の不可避的な付随現象にとどまらず、譲受とは別個の「所持」の事実を肯定できる実態がある場合には、独立した一罪を構成する。
重要事実
被告人らが覚せい剤(または当時の法令に定める禁制品)を譲り受けた際、その譲受に伴う握持行為が行われた。原審は、この譲受に伴う握持を単なる譲受の一部としてではなく、別個の所持の事実として認定し、処断した。これに対し被告人側が、譲受に伴う握持を独立の一罪として罰するのは不当であるとして上告したもの。
あてはめ
判決文によれば、被告人の行為は「譲受に伴う握持行為を独立の一罪として罰したのではない」とされる。すなわち、譲受という取引行為そのものに解消される一時的接触ではなく、記録上の具体的な事実関係に照らして、譲受とは「別個の所持の事実」が認められる。このように客観的な保持の事実が独立して認定される以上、所持罪の成立を妨げるものではない。
結論
譲受とは別個の所持の事実が認められる以上、所持罪の成立は肯定される。
実務上の射程
禁制品の譲受罪と所持罪の関係に関する古典的な判例である。答案上は、譲受行為に必然的に伴う極めて短時間の保持は譲受罪に吸収されるとするのが一般的だが、本判決は、譲受後に引き続き保持する場合や、譲受とは独立して評価できる保持実態がある場合に、別個の所持罪(または包括一罪や法条競合としての評価)が成立する根拠として引用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1665 / 裁判年月日: 昭和31年1月12日 / 結論: 棄却
昭和二八年三月一〇日頃から同年六月末日頃までの間に接続して一一回に覚せい剤を譲受けた行為と、その覚せい剤の一部を同年七月一四日頃居宅炊事場の石油罐または土蔵内にそれぞれ隠匿所持していた行為とは、各別個の罪を構成し併合罪となる。
事件番号: 昭和27(あ)411 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
麻薬中毒患者が自己の中毒症状緩和のため使用する目的をもつて、麻薬を譲り受け所持する場合には、右譲り受ける行為と所持する行為とはこれを包括し、一罪を構成するものと解すべきである。