一 所論は憲法三一条違反をいうけれども、その実質は原判決が覚せい剤取締法四一条二項の解釈の誤りの控訴趣旨に対する判断を遺脱したという単なる刑訴法違反の主張であり、かような判断遺脱の主張は刑訴法四〇五条の上告理由にあたらないこと当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)第三一三〇号同二七年一月一〇日第一小法廷判決、刑集六巻一号六九頁参照) 二 覚せい剤取締法四一条一項所定の各違反者がたとえ不当の利益を得なかつた場合でもなお情状により同条項所定の刑を併科することができること同条二項の法意として明白である。
一 控訴趣旨に対する判断遺脱の違法と上告理由 二 覚せい剤取締法第四一条第二項の法意
刑訴法405条1項,刑訴法392条1項,憲法31条,覚せい剤取締法41条1項,覚せい剤取締法41条2項
判旨
覚せい剤取締法41条2項にいう「情状」とは、不当な利得を得た事情に限定されるものではなく、不当利得がない単なる製造者であっても、情状により懲役と罰金を併科することができる。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法41条2項(現行法でも類型の併科規定あり)に規定される、懲役と罰金を併科する場合の要件である「情状」の意義。特に、不当な利得を得ていることが必要か。
規範
罰金併科の要件たる「情状」とは、犯行の動機、態様、結果等の諸事情を包括的に指すものであり、必ずしも営利目的や不当利得の存在を必要条件とするものではない。
重要事実
被告人は覚せい剤取締法違反(製造)の罪に問われた。第一審判決は、被告人に対して懲役刑に加え、同法41条2項に基づき罰金刑を併科した。これに対し弁護人は、同条項の「情状」とは不当な利得を得たような事情を指すところ、本件被告人には不当利得がないため罰金の併科は違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…
あてはめ
覚せい剤取締法41条1項所定の違反行為を行った者が、たとえ不当な利得を得ていなかったとしても、犯行の性質や社会的影響等の諸般の事情(情状)を考慮して併科を課すことは同条2項の法意として明白である。したがって、単なる製造行為であっても情状により併科は妨げられない。
結論
被告人に不当な利得がない場合であっても、情状により懲役及び罰金を併科することは適法である。
実務上の射程
併科規定における「情状」の意義を広く解した判例であり、薬物犯罪における営利性の欠如が直ちに罰金併科を否定する理由にはならないことを示している。答案上は、裁量的併科の要件解釈において、限定解釈を排する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和55(あ)1558 / 裁判年月日: 昭和57年6月28日 / 結論: 棄却
覚せい剤取締法四一条の二第二項にいう「営利の目的」とは、犯人がみずから財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいう。