判旨
覚せい剤取締法上の「製造」には、化学的製出や調合のみならず、製品を小分けして容器に納め封緘し、譲渡に適する状態に製作する行為も含まれる。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法15条1項(当時)にいう「製造」の意義および既遂時期が問題となる。特に、化学的な生成工程が完了した後の「小分け・容器詰め・封緘」といった製品化の工程が「製造」の概念に含まれるか否かが争点となった。
規範
覚せい剤取締法における「製造」とは、原料から化学的方法により覚せい剤を製出すること、または化学的変化を伴わずに調合・混合して製剤することのみならず、製品を小分けして容器に納め封緘を施し、施用機関や研究者に譲り渡すに適する状態に製作する行為をも含むと解する。
重要事実
被告人は、覚せい剤を製造したとして覚せい剤取締法違反で起訴された。原判決(東京高裁判決)は、殺菌水に原料等を溶解した時点で製造罪は既遂に達し、その後のアンプル詰めは不要であるとの判断を示していた。これに対し、弁護人が法令違反を理由に上告した事案である。
あてはめ
最高裁は、製造の意義を広く解釈する立場を採る。本件において、被告人が行った行為は、覚せい剤を製品として流通可能な状態にするための工程(小分け・容器詰め・封緘等)に該当すると考えられる。仮に化学的生成が完了していたとしても、譲り渡すに適する状態に製作する行為を行っている以上、同法上の「製造」にあたると解される。
結論
被告人の本件行為は覚せい剤の製造にあたるため、有罪とした原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
「製造」を単なる化学的生成に限定せず、流通可能な状態にする最終工程まで含めた点に射程がある。薬物犯罪における「製造」の定義を広範に捉えるリーディングケースとして、既遂時期の認定や共犯の成否を検討する際の解釈指針となる。
事件番号: 昭和28(あ)1180 / 裁判年月日: 昭和28年10月22日 / 結論: 棄却
覚せい剤取締法にいわゆる覚せい剤の製造とは、覚せい剤の原料から化学的方法により覚せい剤を製出し、または化学的変化を伴わないで調合または混合してこれを製剤する場合は勿論、かかる製品を小分して容器に納め封緘を施し覚せい剤の施用機関または研究者に譲り渡すに適する状態に製作する場合をも含むものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…