覚せい剤取締法第一四条にいわゆる所持とは、必ずしも覚せい剤を物理的に把持することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあるをもつて足りると解すべきである。
覚せい剤取締法第一四条にいわゆる所持の意義
覚せい剤取締法14条
判旨
覚せい剤取締法における「所持」とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為であり、必ずしも物理的な把持を要せず、物の存在を認識し、これを管理しうる状態にあれば足りる。
問題の所在(論点)
覚せい剤取締法上の「所持」の意義、特に物理的把持(直接の接触)がない場合でも「所持」が認められるかどうかが問題となった。
規範
覚せい剤取締法における「所持」とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいう。これは必ずしも覚せい剤を物理的に把持することを必要とせず、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあることをもって足りると解すべきである。
重要事実
被告人は、覚せい剤5cc入りの注射液370本を所持していたとして、覚せい剤取締法違反で起訴された。被告人は、当該覚せい剤を直接身に付けていたわけではない等の事情から「所持」の成否を争ったが、第一審および原審は、被告人が当該覚せい剤の存在を認識し、かつ管理しうる状態にあったと認定して有罪とした。これに対し被告人が上告した事案である。
あてはめ
本件において、被告人は覚せい剤5cc入り注射液370本の存在を明確に認識していた。また、それらを自ら管理し、処分しうる支配的な状況にあったと認められる。このように、対象物を物理的に手に持っていない状態であっても、その存在の認識と管理可能性が認められる以上、覚せい剤を保管する実力支配関係が成立していると評価できる。
結論
被告人は当該覚せい剤を「所持」していたと認められる。したがって、原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、所持概念が物理的把持に限定されないことを明示した重要判例である。答案上では、コインロッカーに預けた場合や他人に一時的に預けた場合など、直接占有していないケースにおいて「認識」と「管理可能性(支配可能性)」をキーワードに「実力支配関係」を基礎付ける際の規範として活用する。
事件番号: 昭和28(あ)3282 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚醒剤取締法における所持罪の成立には、対象物が覚醒剤であることの認識が必要であるが、本件では被告人が覚醒剤であることを知りながら所持していたと認められるため、憲法違反の問題は生じない。 第1 事案の概要:被告人が覚醒剤を所持していた事案において、弁護人は「自己の意思に反して、あるいは不知によって所…
事件番号: 昭和30(あ)1665 / 裁判年月日: 昭和31年1月12日 / 結論: 棄却
昭和二八年三月一〇日頃から同年六月末日頃までの間に接続して一一回に覚せい剤を譲受けた行為と、その覚せい剤の一部を同年七月一四日頃居宅炊事場の石油罐または土蔵内にそれぞれ隠匿所持していた行為とは、各別個の罪を構成し併合罪となる。