一 覚せい剤取締法第一四条にいわゆる「所持」の概念は明確を欠くものではない。 二 覚せい剤取締法第四一条第一項がその第一号から第五号までの所為に対し、同一の法定刑を定めたからといつて、憲法第一三条に違反しない 三 押収の覚せい剤を没収しなかつた第一審判決の違法を職権により匡正しないでこれを看過した原判決は違法であると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて、上告理由として許されない
一 覚せい剤取締法第一四条にいわゆる「所持」の概念 二 覚せい剤取締違法第四一条第一項が第一号から第五号までの所為に対し同一の法定刑を定めたことは憲法第一三条に違反するか 三 被告人にとり不利益な主張であつて上告理由として許されない一事例
覚せい剤取締法14条,覚せい剤取締法41条,覚せい剤取締法41条の3,憲法13条,憲法31条,刑訴法405条
判旨
覚せい剤取締法上の「所持」とは、人が物を保管する実力支配関係をいい、その存否は社会通念に従って決定される。覚せい剤を他人の部屋に一時遺留して立ち去った場合であっても、実力支配関係が継続していると認められる限り所持にあたる。
問題の所在(論点)
覚せい剤を他人の場所に遺留して立ち去った場合、なお「所持」(覚せい剤取締法14条)の要件を充足するか。
規範
「所持」とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいう。この実力支配関係が持続する限り所持は存続し、その存否は、各場合における諸般の事情に従い、社会通念によって決定される。
重要事実
被告人は、肩掛鞄の中に本件覚せい剤を入れて知人宅を訪れ、同人の部屋に覚せい剤を置いたまま雑談していた。その最中、被告人は警察官らしい人物を認めたため、覚せい剤をその場に遺留したまま帰宅した。
あてはめ
被告人は自ら覚せい剤を鞄に入れて知人宅に持ち込んでおり、その場に置いたのは一時的な雑談のためである。警察官を認めて遺留したまま帰宅したという経緯に照らせば、物理的にその場を離れたとしても、社会通念上、被告人と本件覚せい剤との間の保管・実力支配関係が直ちに消滅したとはいえない。したがって、当該場所において被告人が覚せい剤を所持していたと認められる。
結論
被告人が覚せい剤を遺留して帰宅した場合であっても、当該場所における覚せい剤の所持罪が成立する。
実務上の射程
「所持」を物理的な把持に限定せず、社会通念上の実力支配関係として広く捉える。置き忘れや一時的な隠匿、他人に預けている場合など、直接の身体的接触がない場面での所持の成否を論ずる際の基本規範となる。
事件番号: 昭和27(あ)5774 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
刑訴第一八一条第三項の規定は検察官のみが上訴した場合の規定であり、原審が被告人に刑訴第一八一条第一項により訴訟費用の負担を命じたとしても本件においては、被告人の控訴により生じた国選弁護人に関する費用の負担を命じたにすぎないのであるから所論違憲の主張は前提において採用できない。
事件番号: 平成13(あ)882 / 裁判年月日: 平成13年11月12日 / 結論: 棄却
夜間相当数の客が出入りするいわゆるラブホテルの4階の客室に宿泊した者が,同室の窓から直線距離で約12m,水平距離で約4m離れた同ホテル敷地内の駐車場の通路上に,覚せい剤の入ったセカンドバッグを投げ,同バッグを取り戻しに行くことなく翌朝までこれを放置し,一時同バッグを投げたこと自体の記憶も不確かになっていた上,その間に同…
事件番号: 昭和31(あ)300 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
覚せい剤取締法第一四条にいわゆる所持とは、必ずしも覚せい剤を物理的に把持することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあるをもつて足りると解すべきである。
事件番号: 昭和30(あ)354 / 裁判年月日: 昭和30年5月28日 / 結論: 棄却
本件麻薬の所持が麻薬取締法にいう所持に当らないという主張であるが、同法にいう所持は必ずしも物理的な握持関係ではなく、法律的な観念であるから、所論のような事実であつても、また重畳的にも所持を認定することができないことはない。