強制採尿の過程に、適切な条件を付した捜索差押令状でなく、身体検査令状及び鑑定処分許可状によつてこれを行つた不備があつても、法の実質的な要請が満されているときには(判文参照)、右の不備は採尿検査の適法性をそこなうものではない。
強制採尿の過程に適切な条件を付した捜索差押令状によらなかつた不備があつても採尿検査の適法性がそこなわれないとされた事例
憲法31条,憲法35条,憲法38条2項,刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条,刑訴法222条
判旨
強制採尿は捜索差押令状によるべきであるが、令状の種類が異なっても、捜査上の必要性が高く、被疑者の身体の安全と人格の保護に十分な配慮がなされていれば、実質的な法の要請を満たし適法となり得る。
問題の所在(論点)
強制採尿を捜索差押令状以外の令状(身体検査令状等)に基づき実施した場合、その手続は適法か。令状の種類の不一致が採尿検査の適法性に及ぼす影響が問題となる。
規範
被疑者の体内の尿を証拠として強制的に採取するには、捜索差押令状(刑事訴訟法218条1項)によるべきである。また、当該令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。もっとも、令状の種類・形式が異なっていても、実質的な法の要請が満たされていると認められる特段の事情があれば、適法性を損なわない。
重要事実
本件における尿の採取は、捜索差押令状ではなく、身体検査令状および鑑定処分許可状に基づく強制処分として実施された。しかし、その実施に至る経緯や実施の態様をみると、犯罪捜査上真にやむを得ない事情が存在し、かつ被疑者の身体の安全と人格の保護のために十分な配慮が尽くされた上で、医師による医学的方法をもって行われたものであった。
あてはめ
本来、強制採尿は捜索差押令状により行われるべきであり、本件は令状の種類および形式を異にしている。しかし、本件の実施経緯および態様に照らせば、捜査上の必要性が極めて高く(真にやむを得ない)、かつ被疑者への配慮も十分になされていた。このような状況下では、令状記載条件の不備や形式的な種類の誤りは、適正手続の保障という法の実質的な要請を害するものとはいえない。
結論
令状の種類および形式の不一致は、本件採尿検査の適法性を損なうものではなく、当該処分は適法である。
実務上の射程
強制採尿の性質が捜索差押であることを再確認しつつ、令状の種類の誤りという重大な手続違反があっても、実質的な要請(必要性と身体保護)が満たされれば適法性が維持されるという、手続的瑕疵の治癒あるいは違法性の程度に関する判断基準として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)2287 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
捜査差押が、令状掲記の場所において差押の目的たる物につきなされた以上、押収品が、令状の執行を受くべき者以外の者の所有に属するというだけでは、右差押を違法ならしめるものではない。
事件番号: 昭和53(あ)1835 / 裁判年月日: 昭和54年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被疑者から任意に提出された尿を領置する行為は、強制捜査に当たらない限り、令状なくしてなされたものであっても適法な任意捜査の範囲内である。 第1 事案の概要:捜査機関が、被疑者に対して尿の提出を求め、被疑者が自ら尿を採取して提出した。捜査機関はこの提出された尿を令状なしに領置した。弁護側は、令状なく…