覚せい剤事犯における採尿の違憲主張が欠前提とされた事例
憲法31条,憲法35条
判旨
被疑者から任意に提出された尿を領置する行為は、強制捜査に当たらない限り、令状なくしてなされたものであっても適法な任意捜査の範囲内である。
問題の所在(論点)
被疑者から任意に提出された尿を領置する手続が、令状を要する強制捜査にあたるか、それとも令状不要の任意捜査(領置)として許容されるか。
規範
捜査機関が被疑者から任意に提出された物品を取得する行為は、強制の手段を用いず、被疑者の自由な意思に基づく協力によるものである限り、刑事訴訟法197条1項本文の任意捜査として適法である。この場合、提出された物品を取得する領置(同法221条)に令状は不要である。
重要事実
捜査機関が、被疑者に対して尿の提出を求め、被疑者が自ら尿を採取して提出した。捜査機関はこの提出された尿を令状なしに領置した。弁護側は、令状なくなされた尿の押収・領置は違憲・違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件における尿の採取、提出、およびそれを受けた領置の一連の過程は、強制の手段が用いられた事実は認められず、被疑者の任意の協力に基づくものと判断される。したがって、本件手続は任意捜査の範囲内にとどまるものであり、令状なくしてなされた尿の領置を違法と認めることはできない。
結論
本件尿の領置は適法な任意捜査であり、無令状であっても刑事訴訟法および憲法に違反しない。
実務上の射程
任意提出された物の領置(221条)の適法性を肯定した事例である。実務・答案上は、強制処分(197条1項但書)に該当しないこと、すなわち相手方の意思を制圧するような態様がないことを認定した上で、221条に基づき令状不要で領置可能であるとする流れで使用する。
事件番号: 昭和54(あ)429 / 裁判年月日: 昭和55年10月23日 / 結論: 棄却
一 被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて強制的に尿を採取することは、捜査手続上の強制処分として絶対に許されないものではなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を…