被告人の尿の任意提出の手続に違法があつたとは認められないとして、違法収集証拠を理由とする憲法三一条、三五条違反の主張が欠前提とされた事例
憲法31条,憲法35条
判旨
被告人の尿の任意提出手続に違法がない場合、その鑑定結果を記載した書面は適法な証拠となり得る。また、第一審で同意により適法に証拠調べがなされた証拠につき、事後的に違法収集証拠排除法則を主張することは認められない。
問題の所在(論点)
任意提出された尿の鑑定書に関し、提出手続に違法があるとして違法収集証拠排除法則の適用を主張できるか。また、第一審での証拠同意がその後の争い方にどう影響するか。
規範
任意捜査としての採尿が適法であるためには、提出者の自由な意思に基づく同意があることが必要である。また、証拠排除の主張に関しては、第一審公判廷において適法な証拠同意(刑訴法326条)がなされた場合、当該手続に重大な違法が認められない限り、その証拠能力を争うことはできない。
重要事実
被告人の尿が任意提出され、それに基づく鑑定結果を記載した「鑑定結果について(回答)」と題する書面が証拠として提出された。第一審において、当該書面は弁護人の同意により適法に証拠調べが実施されたが、上告審において弁護側は、尿の任意提出手続に違法があるとして、当該書面が違法収集証拠(憲法31条、35条違反)にあたると主張した。
あてはめ
記録によれば、鑑定の対象とされた尿の任意提出手続には何ら違法が認められない。したがって、証拠収集過程に憲法等の禁ずる令状主義違反等の重大な違法があるとの前提を欠く。さらに、本件書面は第一審公判廷において、当事者の同意に基づき適法に証拠調べが行われている。一旦なされた適法な証拠同意を覆し、事後的に収集手続の違法を理由に証拠能力を否定することはできないと解される。
結論
本件採尿手続に違法は認められず、かつ第一審で適法に証拠同意がなされているため、当該書面を証拠としたことに憲法違反や違法はない。
実務上の射程
任意提出された物件の証拠能力が争われる事案における典型的な判断枠組みを示す。実務上は、第一審で証拠同意をした事実は、後の証拠能力の争いにおいて決定的な不利益(禁反言的効果)をもたらすため、あてはめにおいて「適法な証拠調べがなされたこと」を重視するべきである。
事件番号: 平成6(あ)894 / 裁判年月日: 平成7年5月30日 / 結論: 棄却
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