原審が検事の量刑不当の控訴趣意を理由ありとして刑訴第四〇〇条但書に依り第一審判決(罰金刑)を破棄自判(懲役三月、罰金五千円)するに当り、検察官の請求により被告人の同意の下に被告人に対する別件の起訴状の謄本を取調べている場合には、原審が新しい証拠を取調べなかつたものとはいえない。
刑訴第四〇〇条但書による破棄自判に当り被告人同意の下に検察官請求の被告人に対する別件の起訴状謄本を取り調べている場合と新たな証拠取調の有無
刑訴法400条但書,刑訴法393条
判旨
刑事訴訟において、被告人の同意がある場合には、別件の起訴状の謄本を証拠として取り調べることが許容される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、被告人の同意がある場合に、別件の起訴状の謄本を証拠として取り調べることが許されるか。
規範
検察官の請求により、被告人の同意(刑事訴訟法326条1項参照)が得られている場合には、当該証拠の証拠能力が認められ、裁判所はこれを取り調べることができる。
重要事実
控訴審において、検察官は被告人に対する別件の起訴状の謄本を証拠として請求した。これに対し、被告人は同意を与えたため、原審(控訴審)は当該謄本を取り調べた。上告人は、原審が新しい証拠を調べなかったと主張して上告した。
事件番号: 昭和30(あ)822 / 裁判年月日: 昭和30年7月7日 / 結論: 棄却
いわゆる簡易公判手続の決定のあつた事件において、検察官提出の証拠につき、被告人または弁護人が証拠とすることに意義を述べないときは、被告人または弁護人の同意がなくても証拠調をし且つこれに証拠能力を認めて事実認定の資料に供することができる。
あてはめ
本件では、検察官が別件の起訴状の謄本を証拠として請求している。これに対し、被告人は適法に同意を与えている。したがって、当該証拠を取り調べる手続に違法はなく、原審が証拠を取り調べていないという上告人の主張は前提を欠くといえる。
結論
被告人の同意がある以上、別件起訴状の謄本を取り調べることは適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
伝聞証拠であっても、被告人の同意があれば証拠能力が付与される(刑訴法326条1項)という原則を確認するものである。実務上、被告人の前科や余罪を示す客観的資料として起訴状等が同意に基づき証拠採用される際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和30(あ)3628 / 裁判年月日: 昭和31年6月21日 / 結論: 棄却
他人の被擬事件につき差押えられた証拠物件であつても、被告人において異議なく証拠調のなされてある以上これを証拠とすることは妨げない。