いわゆる簡易公判手続の決定のあつた事件において、検察官提出の証拠につき、被告人または弁護人が証拠とすることに意義を述べないときは、被告人または弁護人の同意がなくても証拠調をし且つこれに証拠能力を認めて事実認定の資料に供することができる。
刑訴第三二〇条第二項の法意
刑訴法291条の2,刑訴法320条,刑訴法326条
判旨
簡易公判手続が決定された事件においては、伝聞証拠であっても、被告人又は弁護人が異議を述べない限り、326条の同意がなくとも証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
簡易公判手続において、326条の同意がない伝聞証拠に証拠能力が認められるか。刑訴法320条2項の解釈が問題となる。
規範
刑事訴訟法291条の2の決定(簡易公判手続)があった事件については、同法320条2項の規定により、321条ないし325条の規定は適用されない。したがって、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものを除き、伝聞証拠であっても証拠能力が認められる。
重要事実
被告人が公判期日において起訴状記載の事実を認めたため、裁判所は簡易公判手続(刑訴法291条の2)によることの決定をした。検察官から提出された証拠に対し、被告人又は弁護人は証拠とすることについて異議を述べなかった。その後、原審はこれらの証拠を事実認定の資料としたが、弁護人は「同意(326条)がないのに証拠能力を認めたのは不当である」として上告した。
あてはめ
本件では、刑訴法291条の2に基づき簡易公判手続を開始する旨の決定がなされている。この場合、証拠能力の制限に関する320条1項(伝聞禁止)の例外として、同条2項が適用される。記録によれば、検察官が提出した当該証拠に対し、被告人及び弁護人は異議を述べていないことが明らかである。したがって、同項の要件を充足し、被告人側の明示的な同意がなくとも適法に証拠調べを行い、事実認定の資料に供することができると判断される。
結論
簡易公判手続において、当事者が異議を述べなかった証拠については、同意がなくとも証拠能力が認められるため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
簡易公判手続における伝聞例外の特則(320条2項)を直接的に確認した判例である。答案上は、簡易公判手続の法的効果(証拠調べの簡略化)を論じる際の根拠として活用する。特に326条の同意制度との違い(異議の不在で足りる点)に留意して記述する。
事件番号: 昭和29(あ)4146 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 棄却
所論被告人の検察官に対する供述調書は刑訴三二二条の書面として検察官が取調を請求し、第一審裁判所も同書面として証拠決定をなし取り調べたものであることは所論のとおりであるが、右供述調書は被告人の署名拇印があり、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであること(同条一項本文前段参照)記録上明白であるから、かかる…