判旨
複数の犯罪事実に対し証拠を包括的に一括挙示するのではなく、各事実に個別対応する形で証拠を挙示した上で、併せて全般的な証拠を付加的に挙示することは、罪となるべき事実の認定として適法である。
問題の所在(論点)
数個の犯罪事実に対し、多くの証拠を一括して掲示する手法は、刑事訴訟法上の証拠の標示として許容されるか。
規範
判決書において罪となるべき事実を認定する場合、個別の犯罪事実に対応する証拠が明確に示されており、その証拠によって事実を認めるに十分であれば、包括的な証拠挙示が併用されていても証拠の標示として違法ではない。
重要事実
被告人Aは公職選挙法違反の罪(第一乃至第七)で起訴された。原判決は事実認定の証拠として、「判示事実全般について」として多数の証拠を一括挙示したが、同時に「判示各項目に対応する証拠として」として、各事実ごとに個別の証拠も挙示していた。被告人側は、数個の犯罪事実に対し証拠を一括掲示するのは判例違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件原判決は、所論が指摘するような単なる一括掲示にとどまるものではない。記録によれば、各項目ごとに個別的な証拠が対応して挙げられており、それら個別証拠のみで各判示事実を優に認定することが可能である。したがって、付加的に「事実全般について」の証拠が挙示されていたとしても、証拠と事実の対応関係が不明確であるとはいえず、判旨を左右するものではない。
結論
本件の証拠挙示に違法はなく、判例違反の主張は前提を欠くため、上告を棄却する。
実務上の射程
判決書における証拠の挙示方法に関する。実務上、複数の余罪や別個の犯罪事実がある場合、どの証拠がどの事実を証明したのかを峻別すべきであるが、本件のように個別対応がなされていれば、便宜上の包括的挙示が混在しても適法性が維持されることを示している。
事件番号: 昭和30(あ)2076 / 裁判年月日: 昭和30年10月14日 / 結論: 棄却
ある被疑事件につき勾留中の被疑者に対し、他の被疑事件につき取調をしたからといつて、特段の事情のない以上、右取調をもつて直ちに不利益な供述を強要したものということはできない。