判旨
刑事訴訟法335条1項が定める有罪判決における「証拠の標目」の示し方について、判示事項を具体的に摘示せず、証拠の種類等を列挙する形式であっても、同条の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
有罪判決において、判示事実に照応する証拠を「証拠の標目」として記載する際、どの程度の具体性が求められるか。刑訴法335条1項の趣旨に照らした記載の許容範囲が問題となる。
規範
刑訴法335条1項が求める「証拠の標目」の記載は、罪となるべき事実を認定した根拠を明らかにし、上訴裁判所による事後的な審査を可能にすることを趣旨とする。したがって、個々の証拠についてその内容を具体的に要約・摘示しなくとも、証拠の種類や名称を特定し、どの事実に対してどの証拠が対応するかを合理的に判別できる程度に示されていれば足りる。
重要事実
被告人が公職選挙法違反(寄附の禁止等)に問われた事案において、第一審裁判所は有罪を言い渡す際、判決文に「証拠の標目」を記載した。これに対し弁護人は、当該記載方法が刑訴法335条所定の方式に違反する旨を主張して控訴・上告した。判決文からは具体的な記載態様の詳細は不明であるが、弁護側は「証拠の標目」の示し方が不十分であることを法令違反として争った。
あてはめ
本件における第一審の証拠の標目の記載は、証拠の名称等を列挙する形式であったと解される。判例(昭和29年6月24日決定)の法理に照らせば、各証拠について具体的な内容を逐一摘示することは要せず、証拠の標目を掲示すれば足りる。本件の記載も、罪となるべき事実を認定するための証拠を特定する機能を果たしており、同条が要求する方式の趣旨に反するものとは認められない。
結論
本件第一審判決の証拠の標目の記載は刑訴法335条1項に違反せず適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、有罪判決の「証拠の標目」は簡潔な列挙で足りるとされており、本判決はその運用を是認したものである。司法試験の答案作成においては、判決文の方式違背を論じる際、刑訴法335条1項の趣旨を「適正な上訴権行使の保障」および「上訴裁判所の審査の便宜」と捉え、標目の列挙がその機能を果たしているかを判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2105 / 裁判年月日: 昭和30年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の犯罪事実に対し証拠を包括的に一括挙示するのではなく、各事実に個別対応する形で証拠を挙示した上で、併せて全般的な証拠を付加的に挙示することは、罪となるべき事実の認定として適法である。 第1 事案の概要:被告人Aは公職選挙法違反の罪(第一乃至第七)で起訴された。原判決は事実認定の証拠として、「判…