判旨
判決書の犯罪事実の記載において、「選挙人」という用語が特定の選挙区の選挙人を指すことが文脈上明白であれば、犯罪構成要件の具体的な記載として欠くところはない。
問題の所在(論点)
判決書における犯罪事実の摘示において、用語の具体性が欠けている場合に、構成要件の具体的な記載として適法といえるか(刑事訴訟法335条1項、256条3項参照)。
規範
犯罪事実の記載は、犯罪の構成要件を具体的に摘示するものでなければならないが、その用語が文脈全体から特定の事実を指すことが明白である場合には、具体的な記載としての要件を満たす。
重要事実
被告人が公職選挙法違反等で起訴された事案において、第一審判決の犯罪事実に「選挙人」との記載があった。上告人は、当該「選挙人」がどの選挙区の選挙人を指すのかが不明確であり、構成要件の記載として不十分であると主張して上告した。
あてはめ
第一審判決が摘示する犯罪事実を全体として通読すれば、そこで用いられている「選挙人」という語が「長野県第二区の選挙人」を意味していることは明らかである。したがって、特定の選挙区が明文で付記されていなくとも、文脈からその対象が特定されており、犯罪構成要件の具体的な記載を欠くものとはいえない。
結論
本件判決の犯罪事実の記載は、具体的な構成要件を充足しており適法である。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
訴因の特定や判決書の罪となるべき事実の記載において、一部の語句が抽象的であっても、前後の文脈や判決文全体からその具体的意味が客観的に一義的なものとして把握できるのであれば、特定を欠く違法にはならないという判断基準を示すものである。
事件番号: 昭和28(あ)3202 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法221条1項4号の買収罪において、判決書に「選挙人にして」と記載されている場合、それが特定の選挙区の選挙人である趣旨であることが証拠等から明白であれば、罪刑法定主義や構成要件の認定として欠けるところはない。 第1 事案の概要:被告人は、長野県第2区における選挙に関して買収行為を行ったとし…