判旨
判決文に直接の記載はないが、判決書に被告人らの肩書住所地が記載され、証拠等と照らし合わせて特定の選挙区の選挙人であることが判読可能であれば、事実摘示として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
判決書において、犯行の主体としての属性(選挙人であること等)が明文で直接記載されていない場合であっても、住所地等の記載や証拠との照らし合わせによってその事実が判読できれば、事実の適示として適法か。
規範
刑事判決書における事実の摘示は、証拠等と照らし合わせることで、被告人らが特定の法的地位(本件では選挙人等)にあることが一義的に明らかとなる態様であれば、必要十分な記載を具備しているものと解される。
重要事実
被告人、A及びBは、公職選挙法違反の罪に問われた。第一審判決の判決文には、被告人ら及びA、Bの肩書住所地が記載されていた。弁護人は、判決文にこれら三名が「長野県第二区の選挙人」である旨の明示的な記載がないことを捉え、判決に違法があると主張して上告した。
あてはめ
第一審判決に記載された被告人、A及びBの肩書住所地を、挙示された証拠と照らし合わせて検討すれば、当該人物らがいずれも「長野県第二区の選挙人」であることは自ずから判明する。したがって、特定の属性を直接的な文言で表現していなくても、判決全体としてその事実は適法に摘示されていると評価できる。
結論
被告人らが選挙人であることは、判決書の他の記載や証拠から明白であり、第一審判決を是認した原判決に違法はない。
実務上の射程
判決書における事実摘示の程度に関する判例である。構成要件要素となる身分や属性について、判決文の一部に明示がない場合でも、住所等の記載から客観的にその属性が導き出せれば、判決不備や理由不備の違法を問われないことを示している。
事件番号: 昭和28(あ)3188 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の犯罪事実の記載において、「選挙人」という用語が特定の選挙区の選挙人を指すことが文脈上明白であれば、犯罪構成要件の具体的な記載として欠くところはない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反等で起訴された事案において、第一審判決の犯罪事実に「選挙人」との記載があった。上告人は、当該「選挙人…