一 如何なる法令を適用して主文の判断をするに至つたかが判る場合には、法条の羅列も違法ではない。 二 刑訴規則二一八条の趣旨は、判決書作成の労力を省略することにより審理に重点を置かしめようとするものであるから、起訴状の写の添附の如きは当然必要としないとする趣旨の規定である。 三 公判調書のみによつて立証を許されるのは、記載された訴訟手続の適否についてであるから、受訴裁判所の裁判官が判事であるか判事補であるかの如きは、他の方法で調査することを何ら妨げるものではない。またこのようなことは、証拠により認定すべき事実に属しないから、裁判所に顕著であるとして控訴趣意に対して判断をした原判決は正当であつて、何ら非難すべきものではない。 四 刑訴規則四四条を改正した昭和二六年最高裁判所規則第一五号は、通常当然行われる事項の公判調書への記載を省略することにより、事務の能率化、簡易化を図つたものであつて、通常当然に行われることが行われていなかつた場合には、当事者又は弁護人から異議を申し立てれば、これを公判調書に記載することにより、手続の正確化を図り得るし、また上級審において審査の対象とすることができるのである。更に公判調書の記載については、その正確性についての異議申立の制度さえ存在するのであるから、刑訴規則四四条を無効とし、或は第一審の手続を憲法違反とする所論は、その実質において理由のない訴訟法規の非難にすぎないので採用できない。
一 適用法令の判示方 二 刑訴規則第二一八条の趣旨 三 判決をした裁判官が判事であるか判事補であるかということは公判調書以外の資料によつて判断できるか 四 刑訴規則第四四条に対する昭和二六年最高裁判所規則第一五号の改正趣旨。
刑訴法335条1項,刑訴法48条,刑訴法317条,刑訴規則218条,刑訴規則44条4号,刑訴規則(昭和26年最高裁判規則15号による改正後のもの)44条
判旨
刑事訴訟規則218条に基づく起訴状の引用において、写しの添付は不要であり、また通常当然に行われるべき訴訟手続が公判調書に記載されていないからといって、直ちに当該手続が不履行であったと解すべきではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟規則218条に基づく起訴状の引用方法の妥当性、および公判調書に通常行われるべき訴訟手続の記載がないことが、直ちに憲法違反や手続の不履行を意味するか。
規範
1. 刑事訴訟規則218条の趣旨は、判決書作成の労力を省き審理に重点を置く点にある。したがって、起訴状の引用に際し、写しの添付等は必要ない。 2. 通常当然に行われるべき事項(審判の公開、冒頭手続等)について公判調書への記載を省略する規定(刑訴規則44条等)は、事務の能率化を目的とする。記載がない場合でも、異議申し立て等により手続の正確性を確保する制度が存する以上、記載の欠如から直ちに手続の不履行を推認することはできない。
重要事実
被告人が憲法31条、37条、38条、82条違反等を理由に上告した事案。主な主張内容は、①判決書において起訴状を引用する際に写しが添付されていないこと、②公判調書に裁判官・検察官の具体的な官名(判事・判事補等)の記載がないこと、③公判調書に審判公開の旨や冒頭手続の実施状況の記載がないことを不服とするものであった。
あてはめ
1. 起訴状の引用について、判旨は規則の趣旨が判決作成の簡素化にあるとし、写しの添付がなくても判決自体の効力に影響せず、記録保存上の問題は別途解決可能であるとした。 2. 官名の記載について、「裁判官」「検察官」という表記自体が官名であり、判事等の詳細な官名の記載は不要である。 3. 公判手続の記載省略について、昭和26年の規則改正により事務の能率化が図られた結果であり、記載がないからといって通常の手続が行われなかったとはいえない。不備があれば異議申立制度によって是正可能であり、適正手続に反しない。
結論
本件各手続は刑事訴訟規則および憲法に違反するものではなく、適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の記載(起訴状の引用)や公判調書の記載省略に関する解釈指針を示す。実務上、公判調書の記載の有無と実際の手続実施の有無を切り離して考える際の根拠となり、規則の合憲性を支える先例として機能する。
事件番号: 昭和28(あ)3082 / 裁判年月日: 昭和28年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟規則246条に基づき、判決書において控訴趣意書の記載を引用することは、判決に控訴趣意を直接記載したのと同一の効果を生ずるため、訴訟法上の違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した際、弁護人は「判決書に控訴趣意の記載がないこと」を実質的な理由として、憲法違反および訴訟法違反…