公判調書に証拠書類が取り調べられた旨の記載があり、検察官がその謄本を提出するについて被告人側より異議を申し立てた形跡もなく、且つ同謄本が記鉄に編綴されている以上、右謄本の提出につき裁判所の許可があつた旨が公判調書に記載されていないからといつて、右許可がなかつたものとすることはできない。
証拠書類の謄本の提出と裁判所の許可。
刑訴法310条但書,刑訴法48条2項,刑訴規則44条1項30号ト
判旨
証拠調べを原本で行い、その後に裁判所の許可を得て謄本を提出することは適法であり、裁判所の許可の有無が公判調書に記載されていなくとも直ちに違法とはならない。また、検察官作成の供述調書は刑訴規則39条の問答体形式に従う必要はなく、署名押印があれば証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
原本ではなく謄本が綴じられている場合の証拠調べ手続の適法性と、裁判所の許可の要否およびその記載義務が問題となる。また、検察官作成の供述調書に刑訴規則39条(問答体形式)が適用されるか、及びその不備が証拠能力に影響するかが問われた。
規範
1.刑事訴訟法310条但書により、証拠調べ終了後、裁判所の許可があるときは証拠書類の原本に代えて謄本を提出できる。この許可の有無は公判調書の必要的記載事項(刑訴法48条2項、規則44条1項30号等)ではない。2.検察官作成の供述調書については、裁判所・裁判官による調書作成の方式を定めた刑訴規則39条は適用されず、問答体で作成されていないことをもって直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人の刑事事件において、検察官は共犯者Aの検察官面前供述調書を証拠請求した。一審公判では原本によって証拠調べが行われたが、実際に訴訟記録に綴じられたのは検察事務官の認証がある謄本であった。公判調書には、原本に代えて謄本を提出することに関する裁判所の許可の記載がなかった。また、当該調書は問答体形式ではなかった。弁護人は、謄本提出の許可がないこと、調書の作成形式が刑訴規則39条に違反すること等を理由に、当該調書の証拠能力を否定し、判例違反を主張して上告した。
あてはめ
1.手続面について、証拠調べ自体は原本で行われており、その後の謄本提出は刑訴法310条但書に基づく。許可の記載が公判調書にないことは直ちに不許可を意味せず、被告人側から異議も出ていないことから、謄本提出は適法である。2.調書の形式について、刑訴規則39条は裁判所等の調書に関する規定であり、検察官作成の供述調書(刑訴法198条等)には適用されない。本件調書には署名押印も認められるため、問答体でないことをもって証拠能力を否定することはできない。以上より、当該調書を証拠として採用した原判決に違法はない。
結論
原本で証拠調べを行い、謄本を提出する手続に違法はなく、また検察官作成の供述調書が問答体でないことも証拠能力を否定する理由とはならない。上告棄却。
実務上の射程
実務上、証拠原本を還付し謄本を代用する際の手続的瑕疵の主張を封じる際の根拠となる。また、検面調書等の作成形式(問答体か物語体か)が証拠能力に影響しないことを明確にしており、刑訴規則39条の適用範囲を限定する際にも有用である。
事件番号: 昭和29(あ)2540 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官面前調書の証拠能力に関し、伝聞例外の要件たる『特信情況』の存否は事実審裁判所の裁量に属する。また、公判において被告人に反対尋問の機会が十分に与えられていた場合には、当該調書の証拠採用は憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは公職選挙法違反等に問われた事案において、検察官作成のAら計6…