所論は、原判決は、被告人以外の者の司法警察員に対する各供述調書を刑訴法第三二一条第一項第二号の書面として証拠能力を認め、これを犯罪事実認定の資料とした違法があると前提して判例違反を主張するのであるが、原判決は、同人らの検察官に対する各供述調書を証拠としており、同調書に引用されている限りにおいて同人らの当該司法警察員に対する供述調書を参考資料として揚げているにすぎず、独立してこれに所論の如き証拠能力を認めたものではないことを原判決文上明白であるから、所論判例(福岡高裁昭和二八年一一月九日判決、高裁刑集六巻一〇号一三九五頁・東京高等裁判所昭和三六年六月一五日判決、東京高時報一二巻六号一〇二頁)違反の主張は、その前提において失当であり、所論の実質は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。
被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書を独立して刑訴法第三二一条第一項第二号の書面として証拠能力を認めたものではないとされた事例。
刑訴法321条1項2号,刑訴法321条1項3号,刑訴法405条
判旨
検察官調書の中で司法警察員に対する供述が引用されている場合、当該検察官調書を証拠とする際に引用部分を「参照資料」として用いることは、直ちに引用部分に独立した証拠能力を認めたことにはならない。
問題の所在(論点)
検察官に対する供述調書に司法警察員に対する供述が引用されている場合において、その引用部分を事実認定の参照資料とすることが、司法警察員に対する供述調書(刑訴法321条1項2号後段)としての独立した証拠能力を必要とするか。
規範
検察官に対する供述調書(刑訴法321条1項2号)の中に、司法警察員に対する供述が引用されている場合であっても、それが当該検察官調書の証拠能力の範囲内で内容を補足・参照する資料として扱われるにすぎないときは、引用された司法警察員に対する供述調書について独立して321条1項2号の要件を満たす必要はない。
重要事実
被告人両名の弁護人は、原判決がA、B及びCの司法警察員に対する各供述調書について、刑事訴訟法321条1項2号の要件(伝判例外)を満たさないにもかかわらず証拠能力を認め、犯罪事実認定の資料としたことは違法であると主張して上告した。しかし、実際の原判決の処理は、検察官に対する供述調書を証拠として採用し、その調書内に引用されている限度で司法警察員に対する供述内容を「参照資料」として掲げたものであった。
あてはめ
本件において、原判決は同人らの検察官に対する各供述調書を証拠として採用している。司法警察員に対する供述調書については、検察官調書に引用されている範囲内で「参照資料」として掲げているにすぎない。これは、独立して司法警察員に対する供述調書に証拠能力を付与したものではないことが判文上明らかである。したがって、検察官調書の証拠能力が認められる以上、その内部に引用された内容を参照すること自体は、司法警察員に対する調書としての証拠能力の要件を別途問うべき性質のものではない。
結論
原判決の判断に違法はなく、司法警察員に対する供述を独立した証拠として採用したことを前提とする上告論旨は失当であり、棄却を免れない。
実務上の射程
検察官調書(2号書面)の中に警察段階の供述が引用されている場合、検察官調書の証拠能力の範囲内で事実認定の参考とされることは許容される。答案上、伝聞例外の検討において、引用部分が独立した証拠として用いられているのか、それとも適法な調書の一体的な内容として扱われているのかを区別する際の視点として活用できる。ただし、実質的に警察段階の供述を独立した証拠として用いる場合には、依然として厳格な証拠能力の検討が必要であることに注意を要する。
事件番号: 昭和30(あ)2053 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述に任意性を疑うべき証跡がない場合、憲法違反の主張は前提を欠く。また、証人の検察官面前調書について、公判供述よりも信用すべき特別の情況があると認定される限り、その証拠能力を認めた原判断は妥当である。 第1 事案の概要:被告人らの供述の任意性が争点となったほか、証人Aが検察官に対して行った…