判旨
勾留手続に違法があったとしても、その一事のみをもって直ちに判決が憲法違反となるものではない。また、適法な証拠調べを経た供述調書は、内容が任意性に疑いがある等の特段の事情がない限り、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
先行する勾留手続の違法が、後の公判手続における終局判決の憲法適合性に影響を及ぼすか。また、捜査段階での供述調書の作成過程に瑕疵があるとの主張に対し、判決の妥当性はどのように判断されるか。
規範
被告人の勾留手続に仮に違法があったとしても、その事実のみによって直ちに終局判決が憲法に違反して無効となるものではない。また、検察官に対する供述調書が適法な証拠調べを経ており、かつその内容が恣意的(作文的)であると疑わせる証拠がない場合には、当該調書の証拠能力及び判決の正当性は否定されない。
重要事実
被告人A及びBが起訴された事案において、被告人A側は、勾留手続に違法があったこと、及び検察官に対する供述調書が検察官による勝手な作文であり証拠として不当であることを主張して、憲法違反を理由に上告した。しかし、当該供述調書は第一審において適法な証拠調べの手続きを終えていた。
あてはめ
本件において被告人側は勾留の違法を主張するが、判例の趣旨に照らせば、仮に勾留が違法であっても判決自体の憲法違反を導くものではない。さらに、問題とされた検察官面前調書についても、第一審で適法な証拠調べを経ており、記録上も検察官の想像による作文であると疑わせるような証跡は認められない。したがって、証拠の任意性や真実性に疑いを生じさせる特段の事情は存在しないと解される。
結論
本件各上告を棄却する。勾留の違法は直ちに判決の憲法違反とはならず、適法に証拠調べを経た調書の証拠能力も維持される。
実務上の射程
刑事訴訟において捜査段階の違法(勾留等)を理由に判決の破棄を求める際、その違法が直接判決に影響を及ぼすものであるか、あるいは証拠排除則を適用すべき事情があるかを厳格に検討すべきとする実務上の指針となる。違法収集証拠排除法則の議論の前段階として、手続的違法と判決の関係を整理する際に参照される。
事件番号: 昭和29(あ)2350 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 棄却
公職選挙法違反(戸別訪問)被告事件の証人が公判廷で証言をするに当り、被告人から訪問を受けた日時、目的等について記憶を喪失し、又はその記憶が薄らいで正確な供述ができないため、検察官が証人の記憶を呼び起させるため、やむを得ず、証人が前に検察官に対して供述した内容に基いて尋問しても、これをもつて特に不当な尋問ということはでき…