公職選挙法違反(戸別訪問)被告事件の証人が公判廷で証言をするに当り、被告人から訪問を受けた日時、目的等について記憶を喪失し、又はその記憶が薄らいで正確な供述ができないため、検察官が証人の記憶を呼び起させるため、やむを得ず、証人が前に検察官に対して供述した内容に基いて尋問しても、これをもつて特に不当な尋問ということはできない。
検察官の証人に対する尋問が特に不当とは認められない一事例
刑訴法295条,憲法31条
判旨
不当な尋問等により得られた証拠であっても、訴訟当事者が異議を述べず、裁判所が自由な判断によりこれを採用した場合には、特段の事情がない限り違法とは認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、検察官の尋問に不当な点がある場合に、これに対して異議が述べられなかった状況下で、第一審裁判所が当該証拠を採用して事実認定の資料とすることの適法性が問題となる。
規範
検察官による尋問が不当なものであるか否かは、尋問の態様や経緯に照らして判断される。また、当該尋問に対し被告人又は弁護人から異議が述べられていないこと、及び裁判所が自由な判断に基づき当該証拠を採用した事実は、手続の適法性を肯定する重要な要素となる。
重要事実
第一審において、検察官による尋問が行われ、その尋問結果が被告人の有罪を認定する断罪の資料として採用された。これに対し、弁護側は当該尋問が不当であるとして、訴訟法違反を理由に上告を申し立てた。しかし、尋問の時点において、被告人または弁護人から当該尋問に対する異議が申し立てられた形跡は認められなかった。
あてはめ
本件において、検察官の尋問は特に不当なものとは認められない。加えて、被告人又は弁護人から当該尋問に対して何ら異議を述べた形跡が認められない。このような状況下では、第一審裁判所が自由な心証(自由な判断)により当該証拠を採用して断罪の資料としたことは、裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、違法とは認められないと解される。
結論
本件尋問およびこれに基づく証拠採用の手続に違法はなく、第一審の判断を維持した原審の判示は正当であるため、上告は棄却される。
実務上の射程
公判手続における証拠調べに対する異議申立て(刑訴法309条)の重要性を示唆する。当事者がその場で異議を述べなかった証拠採用について、後から不当性を争うことの困難さを強調しており、答案上では「適正手続の保障と当事者による異議の懈怠」を論じる際の補助的論拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2404 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べに手続的な違法があったとしても、当該証拠を除外した残りの適法な証拠によって犯罪事実の認定が可能であるならば、その違法は判決に影響を及ぼすべきものとはいえず、判決の破棄理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反等に問われた事件において、原審(控訴審)は事実認定を行ったが、そ…