判旨
証拠調べに手続的な違法があったとしても、当該証拠を除外した残りの適法な証拠によって犯罪事実の認定が可能であるならば、その違法は判決に影響を及ぼすべきものとはいえず、判決の破棄理由にはならない。
問題の所在(論点)
適法な証拠調べを経ていない証拠が判決の証拠として採用されている場合において、他の適法な証拠のみで事実認定が可能であるとき、当該手続違法は刑訴法上の判決破棄事由となるか。
規範
刑事訴訟法上の証拠調べ手続に違法がある場合であっても、当該違法な証拠を除外した上で、他の適法な証拠のみによって判示事実を十分に認定し得るときは、当該違法は判決の結果に影響を及ぼさない。したがって、この場合は原判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反等に問われた事件において、原審(控訴審)は事実認定を行ったが、その証拠調べの過程において、一部に適法な証拠調べを経ていない証拠が含まれていた。弁護人は、この手続違法を理由に判決の破棄を求めて上告した。また、公職選挙法252条の規定が憲法14条および44条に違反するとの主張もなされた。
あてはめ
本件において、原審が採用した証拠の中に、適法な証拠調べの手続を経ていないものが含まれていたことは否定できない。しかし、記録によれば、これら違法な証拠を除外したとしても、他に存在する適法な証拠のみを基礎として、原判決が認定した犯罪事実を十分に導き出すことができる。そうであれば、証拠調べの不備という訴訟手続上の違法は、判決の結論を左右するものではなく、原判決を取り消すまでの必要性は認められない。
結論
原判決に証拠調べの違法があっても、他の適法な証拠により事実認定が可能である以上、判決に影響を及ぼす違法とはいえず、上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟手続の違法(刑訴法379条、410条等)を主張する際の「判決に影響を及ぼすべきこと」の有無を判断する枠組みとして機能する。無罪推定や適正手続の観点から批判はあるが、実務上、証拠の不採用や手続違法があっても「証拠の優越」や「結論の妥当性」で違法を治癒させる論理として用いられる。
事件番号: 昭和29(あ)2350 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 棄却
公職選挙法違反(戸別訪問)被告事件の証人が公判廷で証言をするに当り、被告人から訪問を受けた日時、目的等について記憶を喪失し、又はその記憶が薄らいで正確な供述ができないため、検察官が証人の記憶を呼び起させるため、やむを得ず、証人が前に検察官に対して供述した内容に基いて尋問しても、これをもつて特に不当な尋問ということはでき…